「野球は2アウトから――」とはよく言ったものだが、まさに起死回生のヒットは土壇場の局面から飛び出した。
ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は現地3月20日(日本時間21日)、準決勝の日本代表対メキシコ代表が米マイアミにあるローンデポ・パークで開催。後者が4回表にルイス・ウリアス(ミルウォーキー・ブリュワーズ)の3ランアーチで先行していたなかで迎えた終盤、7回裏に侍ジャパンは主砲のバットが火を噴いた。
7回裏に2死から近藤健介(ソフトバンク)のヒットと大谷翔平(ロサンゼルス・エンジェルス)の四球で一、二塁の好機を創出。ここで打席に立ったのは、吉田正尚(ボストン・レッドソックス)だった。
対峙した左腕ジョジョ・ロメロからカウント2-2と追い込まれた吉田だったが、打席内のスラッガーは冷静だった。インローに食い込んでくる138キロの2シームを捉えると、打球はライトスタンドへ一直線。最後はポール際に着弾した。
本人が「お待たせしました」と語った土壇場で飛び出した一打に米メディアも興奮。レッドソックスを熱心に追う『Barstool Sports』のジャレッド・カラビス記者は「ヨシダの特大同点3ランだ! いや、マジか!」とレポートした。
もっとも、試合はそのまま推移はしなかった。直後の8回表には、レッドソックスで吉田の同僚であるアレックス・ベルドゥーゴの勝ち越しタイムリーツーベースでメキシコが逆転。さらにアイザック・パレデスのタイムリーでもう1点を加点した。
2点差とされた侍ジャパン。だが、そのままでは終わらない。8回裏にヘスス・クルスを攻め立てて、1死二、三塁の絶好機を創出すると、代打の山川穂高(西武)が犠牲フライを記録。
さらに4対5として迎えた9回裏には、相手守護神ジオバニー・ガジェゴス(セントルイス・カーディナルス)から先頭打者の大谷が二塁打を放ち、無死二塁のチャンスを生み出すと、ここまで4打数ノーヒット、3三振だった村上宗隆が値千金のサヨナラタイムリーを放ったのである。
カラビス記者がふたたび「マジか!野球って最高だ」と漏らした文字通りの死闘のなかで生み出された日本のドラマチックな展開で、14年ぶりファイナルに辿り着いた。やはり野球は面白い。
(※引用元 THE DIGEST)