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新ユニフォームの背番号見えない問題、そして九里の背中の哲学的考察

2023年4月4日

新ユニフォームの背番号見えない問題、そして九里の背中の哲学的考察

見えない。胸ロゴも名前も背番号も、何も見えない。開幕戦を敵地・神宮球場で迎えた2023年のカープ。その選手たちが着ているビジター用のユニフォームの文字が見えないのである。

ビジター用ユニの見えない問題

昨シーズンオフ、これまで14年間着用されてきたカープのユニフォームが新しくなると発表された。「新ユニフォーム」と言っても、たとえば2002年の「前立てラケットライン・花文字ロゴ」から「赤いピンストライプ・筆記体ロゴ」のような大がかりな変更ではなく、従来のデザインのマイナーチェンジのように思われたが、それでも随所に異なる点が見られた。

一番の変更点がビジター用ユニで、これまでは白色だった胸ロゴや背番号が赤になった。カープの公式HPによれば、ユニフォーム本体はピンクがかった「深みのある赤」、ロゴは「鮮やかな赤」の「異なる赤の組み合わせ」ということなのだが、赤いユニフォームに赤いロゴ、すこぶる視認性が悪いのである。

とは言っても新ユニフォームお披露目会場は室内だし、球場であれば照明の具合で見えるようになるのかも知れないと思っていたが、オープン戦が進むにつれて不安は増していった。那覇のデーゲームでも見えなければ、バンテリンドームやPayPayドームの照明でも見えない。とどめが開幕初戦の神宮のナイター照明である。

開幕後のビジター用ユニは、これまでより若干縁取りのラインを太くする改良が加えられ、近くで見れば確かに見えるし、照明が反射しているようにも思える。しかし遠目に見るとやはり分からない。もしかすると老眼には見えない仕様なのかも知れないし、ひょっとするとバカには見えない背番号なのかも知れない。それなら私はバカで構わない。見えないものは見えないのである。

九里の背中には計3本の赤い縦棒が並んでいた

一方、ホーム用ユニにも若干の不安が残る。これまでよりも背番号が小さくなり、広くなった背中の余白部分に、赤い線が一本入れられた。公式発表によれば、「赤い繁吹(しぶき)のライン」と名づけられたこの線は、「チームの強さ、勢いを象徴するパーツ」とのことである。しかし、まだら模様の赤い線が一本ヒョロリと背中から出ている様子からは「強さや勢い」を感じ取ることは難しく、いっそのこと谷岡ヤスジ先生の「鼻血ブー」くらいに噴き出すべきではなかったか。

このホーム用ユニに対しては「破れている」「ペンキが付いている」「背中を刺されたのだろうか」という数々の感想があるが、私がオープン戦で選手たちの背中を見た限りでは「背番号が串刺しになっている」(特に背番号0の上本崇司の場合、串刺し感が強い)という印象だ。ところが、1人だけ異なる印象の背中があった。背番号11、九里亜蓮である。

3月19日、マツダスタジアムでのオープン戦に先発した九里の背中には、「KURI」というネームの下に「11」という縦棒2本、そしてその下に縦棒1本、計3本の赤い縦棒が並んでいた。それは荒地の地図記号のようでもあり、麻雀牌の三索を逆さにしたようでもあり、あるいはヘーベルハウスのキャラクターの顔にも見える。

今シーズンのカープは、背番号1と111はともに使われていないため、背中が縦棒だけで構成されているのは九里のみである。もっとも、九里が背番号11を背負うようになったのはそんなに昔の話ではない。2021年、入団時から付けていた背番号12から11へと変更になったのだ(カープでは以前も高木宣宏や紀藤真琴らが12から11への変更を行っており、ある意味伝統行事とも言える)。この時九里は、「11」は大谷翔平やダルビッシュ有、岸孝之などが付けている憧れの番号であるとし、その変更を喜んでいた(※注1)。その2年後、まさか「11」にもう一本縦棒がプラスされることなど、九里は予想もしていなかったに違いない。

九里の背中とフォンタナの作品

さて、この九里の背中の縦棒だらけの状況をどのように考えればよいだろうか。矯めつ眇めつしているうちに、ある絵を思い出した。イタリアの前衛芸術家ルチオ・フォンタナの、キャンバスにナイフで縦に切れ目を入れた「空間概念 期待」と題された一連の作品である。切れ目という点では、先述の「破れている」という感想に近いものがある。前ふくやま美術館副館長(現・下瀬美術館副館長)の谷藤史彦氏によれば、フォンタナは自らの作品の切れ目について「無」の象徴であると考えており、さらにその無は全く何もない無ではなく、「万有の根源」「創造の無」であると強調していたという(※注2)。

そんな視点から改めて新ユニフォームを見てみれば、もしかするとこれは「無」と「有」の象徴なのではないかと思えてきた。名前も背番号も何も見えないビジター用ユニは、いわば全く何もない無である。一方でホーム用の「繁吹」は「1」。「1」は中国思想においても古代ギリシャにおいても、究極の根源、有るもの全てを成り立たせるものと考えられてきた。九里はその「1」を3本も背中に背負っている訳である(「九」里なのになぜ「1」なのかという問題や、カープで「1」を語るならば1月11日生まれの一岡竜司について触れなければならないのではないかという問題は残されているが、それは別稿に譲りたい)。

フォンタナに話を戻すと、彼が作品に「期待」と名づけたのは、キャンバスの切れ目ひとつひとつに期待を込めたからだともいう。私も九里の背中の3本の縦棒に期待を込めたい。というのも開幕後、ビジター用ユニで3連敗を喫したカープは、未だ0勝のいわば「無」の状態だからである。本拠地に戻り、ホーム用ユニで1勝を挙げることができるのか。今日先発が予定されている九里の背中の縦棒に期待を託しながら、応援したいと思う。

(※引用元 文春オンライン

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