昨年10月右肘手術
宮崎県日南市の天福球場にカープを訪ねました。雨の第1クールから一転して好天の第2クール2日目です。九里亜蓮(32)や床田寛樹(28)、森下暢仁(26)ら実力派が揃う先発投手陣の中で、是非確認しておきたかったのが大瀬良大地(32)です。
昨年10月に右肘に手術を施し、再スタートを切りました。術後順調というものの、キャンプスタート時点では他の選手と全て同じメニューを消化する段階ではありません。通常、リハビリ色の強い選手はじっくりマイペースでと多くは2軍からですが、新井貴浩監督(47)は大瀬良への大きな期待と信頼から1軍に召集しました。
大瀬良の姿はとても元気に映りました。「遠投でボールが最後まで垂れない(落ちない)ように意識しています」と強さも見せたキャッチボールの後、いつもの穏やかな表情でブルペンに向かいました。立ち投げだけで傾斜を確認した1度目から、この日は捕手を座らせる段階に入りました。本人としては「ブルペン初日です」と位置づける大切な時間でした。
一時代前はブルペンの内容は本人の感触や首脳陣の見立てが主な判断材料でしたが、今は可視化の時代です。投球するマウンドのかたわらにモニターが設置され、1球ごとの球速や縦の変化量、回転効率などが数字で表示されます。ですから、自分の意識(狙い)や感触と結果をすり合わせる事が出来るわけです。
この日は捕手を座らせて25球、最速は144キロ。数値を分析するアナリストもそばにいて、大瀬良は「良かったと思います。ボクが思っていることとアナリストの方の思っていることが、(今の段階で)『全然いいね!』って、そこが一致しているのが良かったです」と振り返りました。例えば数値が示す直球の伸びは去年以上だったといいます。
かつてリハビリは急ぎ過ぎて無理をして失敗したり、のんびりし過ぎて設定に間に合わなかったりした例もありましたが、進化したシステムでリーズナブルに復帰のステップを踏めるようになったのだと、大瀬良の話を聞いて改めて感じました。
データが示す回復ぶりを大瀬良は分かりやすく説明してくれましたが、この投球で右の人差し指に小さな血豆ができたことを、その箇所を見せつつ報道陣に教えてくれました。きれいに整えた爪の縁のほんのちょっと右に幅1ミリ、長さ3ミリくらいにわたって出血しているのが見て取れました。
「今日は強度を上げるので練習前に爪の手入れとかやったんですが、思った以上に掛かりが良くって、ちょっと血豆ができちゃって」と、人差し指と中指でボールを押し込めた直球に満足の表情で指先を見つめていました。
「翌日のキャッチボールの感触が良ければ」と条件付きですが、大瀬良のこの日の投球は次のステップに繋がります。たった1日のブルペンですが、ホッとする大きな一歩を確認できた思いがします。
(※引用元 夕刊フジ)