育成に定評がある広島で、「高校生BIG4」と称された逸材は大きく育っている。しなやかなフォームからの快速球は元より超高校級。尾形佳紀スカウトの評価も高かった。
「軽く投げているようで、低めに素晴しい球を投げていました。球持ちも良く、フォークにもキレがありました」
研究にも練習にも熱心な性格だった。花咲徳栄高のグラウンドにある砂場で自主的に走り込んで下半身を鍛えてきた。高校3年で、自分に合ったフォームを見つけると、球速は150キロを超えた。
「スピードにこだわり過ぎて力んで投げるところがありましたが、脱力してリリースの瞬間に一気に力を伝えるようにしました」
強じんになった下半身とピッチングへの探求心がマッチしての成長だった。
完成度の高いルーキーだったが、球団はデビューを焦らなかった。強化選手に指定し、三軍で時間をかけて育成したのである。強化担当の青木勇人投手コーチは、高橋昂との対話を記憶している。
「すごく真面目な選手で、常に今以上の選手になろうとしていました。『どうすればうまく体が使えるか?』『なぜこうなるのか?』という質問が多かったのを覚えています」。
青木が伝えたのは、「投げるための体の使い方」だった。
「体は柔らかいのですが、投げるための柔軟性がありませんでした。下半身は太いのに、上半身と連動していませんでした。どこかで、もったいないと感じる部分もありました」
そのために、細かな動きづくりの作業を丹念に繰り返した。必要な筋力も補っていった。地道な強化練習の時間の中で、ポテンシャルのパーツがつながっていった。
天性を感じさせながらも、高橋昂自身は「不器用」を自認する。だからこそ、疑問が生まれ、反復練習をいとわないのかもしれない。
シーズン終盤、高橋昂は才能の片鱗を見せた。ウエスタン・リーグでは7試合の登板ながら、防御率1.29をマーク。10月7日のファーム日本選手権では先発を務め、6回2失点で勝利投手に。さらに優秀選手賞に輝いた。
まだ19歳、真面目な性格とチームの育成力、その成長曲線は予測不可能である。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)