命運はこの男のバットに託された。プレミア12(11月5日初戦)に臨む野球日本代表「侍ジャパン」の稲葉篤紀監督(47)は30日、沖縄セルラースタジアム那覇で会見に臨み、31日のカナダとの強化試合で4番を鈴木誠也外野手(25)=広島=に任せることを明かした。
「4番は鈴木誠也でいきます。本塁打を打てる長打力と、勝負強さもある」
宮崎合宿では日本ハム、オリックスとの練習試合で2本塁打を含む6打数3安打3打点。3戦連続の4番起用となる。
30日の打撃練習では、最後のスイングで場外に特大の一発を放ち、スタンドのファンから喝采を浴び、チームメートからも口々に「場外まで行った?やっぱりやべえな…」とたたえられた。
鈴木は「もちろん、期待感の大きさは感じますが、あまり4番にこだわりはないです。どこのポジションで出ても、やることは変わらない。代表ではメンバーもカープと違う。自分はホームランバッターではないですし、後ろにつなぐ仕事ができれば」と語った。
鈴木の打撃練習に付き合う金子誠ヘッド兼打撃コーチ(43)は「とにかく意識が高く練習量が豊富。周りへの好影響が大きい」と絶大な信頼を寄せている。
代表招集から時間の許す限り最後まで球場に残り練習を続けている。一点だけ金子コーチが懸念するのは「この練習量が彼の普段からのルーティンだとすると、大会が始まって試合が続く日程になったとき、思うように練習ができなくなる」という点。「その時にリズムが崩れないか、気を付けてあげたい」と心配している。
鈴木自身は本紙の直撃に「普段からこの練習量が自分のリズムであることは間違いないです」と認めた上で、「大会が始まって練習量が減ったとしても、そこは体のメンテナンスに充てることができると、プラスにとらえたい。普段から対戦国の映像をみるようにしているので、研究の時間が増えるという感じでないんですけどね」と前向きに話した。
「大会が始まれば技術をアップするということより、自分がいかにいい状態で試合に入れるかという点にフォーカスする必要があるが、大会前の今は自分を追い込む時間として考えている。これだけのメンバーに囲まれて、他の選手と話しながらできるわけですから、うまくなれるチャンスなんですよ」
根底にあるのは“野球がうまくなりたい”という強烈な向上心。打席の左右は違えど吉田正尚外野手(26)=オリックス=からは、打席内での対応力や状況に応じたメンタルの整え方を助言してもらっている。
金子コーチは「本当に魅力的な人間ですよね。いつも前を向いていて、少しでもうまくなりたいという野心を隠さない。オレと同じで、人の目を見て話せないタイプの、ものすごい人見知りだけどね」と評する。
「実際のところ、今の練習はプレミアだけを考えてやっているわけじゃない。来年以降の自分の課題と向き合っているんです。だから『外国の投手の動くボールにどう対処する?』とか聞かれても分からない。今の自分の技術で対処していく」
あくまで大会用ではなく、先を見すえての練習を重ねる姿勢に、首脳陣は信頼を深めている。(片岡将)
(※引用元 夕刊フジ)