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ボールボーイの仕事…「あの時はショックすぎて動けなくなりました」

2021年5月31日

ボールボーイの仕事…「あの時はショックすぎて動けなくなりました」

野球好きならば誰もが一度はやってみたい仕事。それはやはり、ボールボーイではないだろうか。

選手の息遣いを間近で感じ、ゲームに参加するかの如くボールをキャッチする。あの菊池涼介のファールボールを、鈴木誠也のファールチップを、場合によってはクロンの自打球を拾うことだってあるのだ。それは野球好きでなくとも興奮するに違いない。

しかし我々が知っているボールボーイの仕事は表面上のものに過ぎない。実はボールボーイは試合を円滑に進めるだけでなく、自チームを支える強力なスタッフでもあるのだ。

ボールボーイの実際の仕事とは一体どのようなものなのか。この方にお話を聞いてみた。

ボールボーイの実際の試合中の業務とは

写真を見てピンときたカープファンも多いだろう。カープで10年間ボールボーイを務めた清古弘樹さんだ。モデルとしても活動し、イケメンボールボーイとしてメディアに多数紹介された爽やかな青年である。

清古さんは広島県安芸区生まれ。幼い頃から大のカープファンだったそうだ。夢はカープ球団に就職すること。そんな清古さんは高校卒業後カープのボールボーイの募集を見つけ、念願叶ってマツダスタジアムで働くこととなった。

ボールボーイのお仕事は具体的に何をするのだろうか。清古さんに聞いてみた。

「広島カープのボールボーイは裏方のサポートもするんです。練習のボールを出したりトンボをかけたり、さらには打撃練習のキャッチャーまで。ホームでナイターがある時は午前中の練習から夕方の相手チームの練習までやることはたくさんあります」

実際の試合中の業務とはどのようなものなのだろうか。

「試合が始まるとアルバイトを加え全部で11人のボールボーイが待機します。ただボールを拾うだけでなく、バットをひく係、レガースを受け取る係、担架要員もいます。特に大事なのは雨天時のシート係。雨の様子を見ていつでも行ける準備をするんです」

そんな大勢のボールボーイがマツダスタジアムに潜んでいたとは夢にも思わなかった。

僕が見ていたのはボールボーイ氷山の一角でしかなかったのだ。

「僕は主に審判にボールを渡す一番気を遣わねばいけないポジションでした。審判は腰の袋にボールを入れてますよね。あれがなくなると審判がボールを要求するのですが、実は審判によっては渡すボールの数が違うんです。通常は4、5球なんですけど白井さんだけは9球なのでグローブで持って行かねばなりませんでした(笑)」

さすが個性の強い白井球審。「江夏の21球」ならぬ「白井の9球」はボールボーイが覚えておかなくてはいけない重要な情報だ。しかし大事な仕事はそれだけではない。

「記念ボールを回収するのも僕の仕事でした。2000本安打くらいの大きな記録だとボールは確保されるのですが、プロ初ヒットや初打点とかだと忘れられがちなんです。なので試合前に相手チームの選手も含めて記念ヒット系の確認もしていました」

記念ヒット系の確認。ちょっと聞いたことがない言葉だが、なんと優しい世界なのだろう。ちなみにサヨナラヒットも回収に行かねばならず(取った相手チームの選手がスタンドに投げ入れないように)喜びに沸く観客をよそにダッシュで外野まで走っていかねばならないとか。その他にもお立ち台を設置する役目もあり、ヒーローインタビューで水かけが流行った時は水がかからないようにバッターボックスから離して設置していたそうだ。あの楽しいシーンの裏には清古さんたちの見えざるサポートがあったと言うわけだ。大変だが愛するカープのためにやりがいのある仕事。しかし清古さんには辛い思い出もある。

「審判に声をかけられて我に返るまで呆然としてました」

「ボールボーイは感情を表に出さず素早く業務をこなさねばなりません。でも2016年の日本シリーズ最終戦でレアード選手にホームランを打たれた時だけはショックすぎて動けなくなりましたね。審判に声をかけられて我に返るまで下を向いて呆然としてました」

確かに生粋のカープファンの清古さんには記憶がなくなるほどの衝撃だったに違いない。気持ちが痛いほどわかる。

ここ数シーズン優勝から遠ざかるカープだが、10年間カープを間近で見続けた清古さんはチームとしての強さをこう語る。

「若手選手の練習はとにかく凄まじいものがありました。試合後もいつもと言っていいほど若手の居残りを手伝っていました。そういった野球が上手くなりたいという空気が充満しているんです」

野球への取り組みだけではない。人としての優しさを感じることも多かった。

「選手の皆さんが本当に気さくに声をかけて労ってくれるんです。同い年の堂林選手や、鈴木誠也選手もよく話しかけてくれました。菊池選手は僕が東京行くと言ったら都会で暮らすアドバイスをくれたり(笑)。會澤さんには向こうでも頑張れと貴重なミットを頂き泣きそうになりました。長野さんもバットをプレゼントしてくださり、流れで隣にいたピレラが『俺も!』とバットをくれました(笑)」

スタッフの方にも思いやりを持って接するカープの選手たち。そんな選手のためにスタッフの皆さんが全力を尽くし、カープという球団が強く魅力的なチームになっていくのだろう。

清古さんはボールボーイをやめた今でも、ついやってしまうことがあるという。

「雨が降ってくると、この雨だとシートを出さないと。とかまだ大丈夫だなと言うのを瞬時に判断してしまうんです。それほどに僕の中にボールボーイというのは生き続けてるんですかね。僕自身も芸能界で頑張ってまたいつかどこかでカープとご縁があると嬉しいですけどね」

体に刻み込まれたボールボーイの魂。「日本一になる試合でボールボーイを務める」という清古さんの夢が後輩ボールボーイによっていつか叶えられますように。

(※引用元 文春オンライン

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