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侍Jの『投手MVP』は栗林、社会人野球で培った経験が大舞台で発揮

2021年8月12日

侍Jの『投手MVP』は栗林、社会人野球で培った経験が大舞台で発揮

5戦全勝で悲願の金メダル獲得を達成した侍ジャパン。多くの選手の活躍が目立ったが、投手陣で大きな役割を果たしたのが抑えの栗林良吏(広島)だ。投手では唯一5試合すべてに登板し、初戦のドミニカ共和国戦こそ失点したものの、2勝&3セーブと見事な働きを見せた。

特に圧巻だったのが準々決勝のアメリカ戦だ。同点の10回表、無死一二塁から始まるタイブレークの場面でマウンドに上がると、打者三人を完璧に抑えて無失点でしのぎ、その裏のサヨナラ勝ちにつなげた。特に先頭打者のメジャー通算218本塁打のトッド・フレイジャーから三振に奪ったフォークは見事という他なかった。

栗林は、シーズンでも5月8日の中日戦で1点リードの8回、1死満塁の場面からマウンドに上がり、代打の井領雅貴を併殺に打ち取ってピンチを切り抜けている。外野フライも許されない場面でフォークを低めに集められる集中力は、およそルーキーとは思えない次元にある。

そんなルーキー右腕だが、アマチュア時代は最初からここまでの安定感があったわけではなかった。名城大3年秋に出場した明治神宮大会では、九州共立大の片山勢三(パナソニック)に2本のホームランを浴びて7失点で負け投手となっている。

この当時はスピードこそあるものの、高めに甘く入るボールも目立っていた。投手としての安定感、そしてピンチの場面での強さを身につけたのは社会人での経験が大きかったのではないだろうか。

社会人野球の主要大会である都市対抗野球、日本選手権の本選はいずれもトーナメント形式で行われており、負ければ終わりの一発勝負である。地元や所属企業を背負って出場する大会で、負けたら終わりという試合でのプレッシャーは相当なものがあり、何年もプレーしているベテラン選手が勝利の瞬間に泣き崩れるという場面も珍しくない。

栗林の所属していたトヨタ自動車は昨年の都市対抗でも優勝候補の一角に挙げられていたが、初戦のセガサミー戦で先発した栗林は7回13奪三振という好投を見せながらも2回にツーランを浴びて負け投手となっている。

ドラフト指名の後に行われた大会で、2年間所属したチームに恩返しできなかった悔しさは相当なものがあったはずだ。プロではその経験を生かし、前半戦でもオリンピックの大舞台でも1本もホームランを打たれることはなかった。

また、社会人野球では2003年という早い段階からタイブレークが導入されており、主要な大会が近づくと、オープン戦でも同じ方式を取り入れるケースもよく見られる。社会人では先発を任されていたこともあって、栗林が都市対抗や日本選手権でタイブレークの場面から登板するような試合はなかったが、そのような緊迫した場面を目の当たりにしてきたというのはプラスとなったはずだ。

現在のプロ野球界を見ても、嘉弥真新也(ソフトバンク)、祖父江大輔(中日)、高梨雄平(巨人)など社会人出身の選手がリリーフで多く一軍で定着しており、走者を背負った場面で多く登板しているのも、社会人の大会方式が少なからず影響しているだろう。

ちなみに、今回の東京オリンピックのメンバーに選ばれた投手11人の中で、社会人野球出身の選手は栗林だけである。シーズン中に抑えとして高い適性を示していたことはもちろんだが、日常的にタイブレークが行われている社会人野球という環境でプレーしてきた栗林をクローザーに抜擢した首脳陣の判断は正しかったと言えそうだ。

今後の国際大会でも、短期決戦やタイブレークでの戦いを経験している投手が、侍ジャパンを支える貴重な存在になることは間違いないだろう。今大会の栗林は、そう感じさせるだけのパフォーマンスを見せていた。(文:西尾典文)

(※引用元 THE DIGEST

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