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元カープ・高橋慶彦と正田耕三が明かした「あの事件」の真相について

2021年8月11日

元カープ・高橋慶彦と正田耕三が明かした「あの事件」の真相について

現役時代に確執が伝えられた、高橋慶彦と正田耕三による禁断のカープOB対談。中編では、1980年代のカープの度を超えた練習量と、独特の人間関係。そして、いよいよ「飛び蹴り事件」に話題が及んだ。

高橋 いまだに理解できなかったのが、夏場に走らされることね。「(春季)キャンプの走り込みでは、3ヶ月くらいしか持たん」と言われて。

正田 「電池が切れる」って、よう言われてました(笑)。

高橋 そうそう。だから、夏にまた走り込みせなあかん。

正田 ポール間走やら、アメリカンノックやら……。

高橋 「どういう考えなん?」って思っていたよ。夏場に体が疲れているってことなんじゃないの……と思いきや、「バッテリー切れやから充電せなあかん」と。

正田 しかも、試合前に走ったりしますから。

高橋 「ベテランは免除」なんて特権、もちろんない。

正田 オールスター期間中なんて、地獄やったですよね。

高橋 オールスターに選ばれれば、マジで最高やった。

正田 そうなんですよ。とにかくカープの練習がきついから、オールスターに出たかったですねぇ。

―― 今にして思えば、ちょっとやりすぎだったのでしょうか?

高橋 でも、それでよかったと思う。ショウ(正田)も同じじゃない? カープだったから今がある。もし違うチームだったら、俺たちはいないな。

正田 いない、いない。まあ、洗脳されちゃうんですよね。練習する環境に馴染んでいって。

高橋 郷に入れば郷に従え、やね。慣れてしまえばそれが当たり前になる。

正田 びっくりすることはありましたけどね。松山の競輪場を走らされたり、オープン戦でビジターなのに相手チームより早く球場に着いて練習したり。

高橋 あったなぁ。(ウォーミング)アップじゃないもん。トレーニングやもんな。今のプロ野球は科学的にトレーニングを考えられているけど、俺たちなんて原始人みたいなもんや。槍と弓矢を持って、高性能のピストルや機関銃と戦うくらいの差がある。

正田 (笑)

―― 当時のカープは個性的な選手も多く、まとまるのは大変だったと思いますが。

正田 今でも覚えてるのが、試合前に先発ピッチャーのペイさん(北別府学)が早めに上がろうとベンチに戻りかけていたら、「あぶなーい!」って声が聞こえて、ペイさんのすぐ横をボールが飛んでいく。ショートから高橋さんがわざと悪送球を投げて(笑)。

高橋 そんなことせんて!(笑) ひどいこと言うねぇ。

正田 ピンチになってみんながマウンドに集まる時も、高橋さん、来ないんだもん。

高橋 たしかに仲は悪かったからな(笑)。

正田 ペイさんが投げる時は、ほんま緊張しましたよ。エラーしたら「あんた何してんの?」って怒られるから。

高橋 あいつ、きついからね。

―― 温厚そうなイメージがありますが。

高橋 いやいや、そうじゃなかったら、あんなインコースにシュートを投げきれんもん。でも、ペイはコントロールが抜群によかったから、守りやすかったな。

正田 高橋さんは、達川(光男)さんとも仲がよくなかったですよね。

高橋 仲悪いわけじゃないんよ。

正田 プライベートは別にして、試合になれば問題なかったですよね。

高橋 そう。達川さんはパフォーマンスがちょっと俺に合わなかっただけで(笑)。達川さんが試合中にコンタクト(レンズ)を落として、みんなでホームベース付近を探したのを覚えてないか?

正田 ナゴヤ球場でしょ?

高橋 一生懸命みんなでコンタクト探して、「もう勘弁してくれ」って。まあ、あれが達川さんらしさだったな。みんな面白い人ばかりだった。

正田 そうですね。山本浩二さんにしても、キヌさん(衣笠祥雄)にしても。

高橋 水谷(実雄)さんもそうやな。

正田 試合前にロッカーでグラブを磨いていたら、先輩に叩かれたことがありました。「おまえ、先輩が話しかけてるのに返事をせんか!」って。いや、聞こえてないし……(笑)。ロッカーでいつも誰かケンカしてましたよね。

高橋 俺は小早川(毅彦)を叩いたしな(笑)。水飲みすぎて太る体質なのに、隠れてコーラ飲みよったから。でも、みんなそうやったよな。こいつは俺に飛び蹴りを食らったし(1988年)。

正田 (笑)

―― ちょうど話が核心に入ってきましたが、原因はなんだったのでしょう?

高橋 ショウが「痛い、痛い」って言うから。

正田 (笑)

高橋 俺たちは洗脳されとったから。古葉さん(竹識/当時広島監督)や(山本)浩二さんから、「ケガをしても痛いって言うな」って。それなのに、ショウは「痛い、痛い」って。最初は俺も「もうわかったから」って、ちょっと我慢したよな。でも、ショウはまだ「痛い」って。だから俺も「痛いとか言うなら、試合出るな、ボケ! こっちが迷惑じゃ」って。

正田 そうでしたね。

高橋 いつも神宮で、二人で試合前に走っていたんだよな。そうしたら、こいつが無視したんだよ。俺のことを無視して、こっちに来ない。「ウォラ~、無視すんじゃねぇ!」と走っていって、思い切り飛び蹴りして。

正田 達川さんが仲に入ってくれましたよね。

高橋 入ったかな?

正田 入りましたよ。それで高橋さん、達川さんも蹴飛ばしてましたよ。達川さんのほうが先輩ちゃうんすか?

高橋 一つ上よ。でも、プロに入ったのは俺のほうが早かった。まあ、ケンカを止めたら、やられるよな(笑)。そういう事件はいろいろとある。

―― 正田さんにも言い分があるのではないでしょうか?

正田 僕はスライディングして肩をケガして、本当に痛かったんですよ。高橋さんは覚えていないかもしれないけど、飛び蹴りの前に伏線があったんです。昼飯の時に品川プリンスホテルの狭い廊下ですれ違って、めちゃくちゃ怒られた。「痛いとか言うんじゃねぇよ、ゲーム出てんのに~。わかってんのか!」って。こちらからすれば、「いや、痛いのに……」って(笑)。

高橋 はっはっはっ!

正田 いや、本当に痛かったんですよ。もう肩が上がらんくらい。それでもゲームには出ていて。それなのに品川で高橋さんからガミガミ言われて、グラウンドでも。よし、無視したろと思って(笑)。

高橋 (笑)

正田 そうしたら、二遊間を組んでいるのに高橋さんがサイン出してくれないんですもん。相手ランナーが盗塁してきたら、どっちがベースカバーに入るか先輩の高橋さんがサインを出すんですけど、こちらがパッて見たら全然見てくれない。「高橋さん、高橋さん!」と呼んでも、無視ですよ。絶対に聞こえてないわけがない(笑)。

高橋 うん、まあでも、面白かったな。いろんなことがあって(笑)。

正田 ゲッツーの時なんか、すごい球がくるんですもん。僕なんか優しいボールを高橋さんに投げるのに、高橋さんはガーン! ってめちゃくちゃ速いボールを投げてくる。こっちはまだベースカバーに入ってないのに(笑)。

高橋 それはゆっくり投げたらイップスがあるから引っかかるやん。昔、怖い先輩に脅されてイップスになっとったから(笑)。心の病よ。

正田 あと、セカンドベース付近にフライが上がった時、高橋さんが「オッケー、オッケー!」って言うから見ていたら、急に「セカンドォ!」って言って。もう、あの時はビックリして(笑)。

高橋 あったな。それでショウの打球は俺が横取りしたりな。

正田 僕が捕るつもりでいるセカンドゴロを、サッと捕っていくんですから。いやぁ、でも高橋さんの守備範囲は広かったですからねぇ。肩も強かったし。

―― 「飛び蹴り事件」以降は、お二人は口をきかない関係だったのですか?

高橋 全然、そんなことないよ。

正田 そうですね。

高橋 俺がペイ(北別府)や達川さんと仲悪いという延長線で、正田の飛び蹴り事件があっただけやから。ペイとだって、この前にトークショーをやったくらいだから。

正田 へぇ~、そうなんですか。

―― 高橋さんと正田さんが二遊間のレギュラーとしてコンビを組んだのは、1986年からの4年間でした。お互いにやりやすかったですか?

正田 やりやすかったですね。僕らの守備範囲は広かったと思いますよ。

高橋 その前は怖い先輩ばかりだったもん(笑)。にしても、昔は怖い人が多かったな。最初に広島に来た時に「カバチ言いよんな」なんて脅かされて。

正田 カバチは広島弁で「屁理屈」って意味で。ようは「言い訳するな」ってことなんですよね。最初は広島弁に馴染めなかったですよ。

高橋 野次が強烈で、遠征に行ったら広島に帰りたくなかったもんな。

正田 東京はやりやすかった(笑)。広島なんて物は飛んでくるし、「おんどりゃぁ!」の世界やから。

高橋 よう客とケンカしたな。「ヨシヒコ、なに1球目打っとんじゃ!」「やかましいわ、コラ!」って(笑)。

正田 僕「家、燃やす」って言われましたよ。

高橋 でも、本当に面白かったよなぁ。選手も客も、ひどい人もいっぱいいたけど。

正田 面白かったですねぇ。

(※引用元 web Sportiva

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