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どこまでも仲間のために…カープの3連覇を支えた男・今村の『本質』

2021年10月24日

どこまでも仲間のために…カープの3連覇を支えた男・今村の『本質』

2日間の番組ロケが終わった。JR佐世保駅の改札前で出演者やスタッフは解散だ。カメラマンやディレクターを含めたスタッフは広島に帰る。一方の、ゲスト2人は、故郷である長崎に残って、束の間の休日を迎えることになっていた。

広島行き特急列車の出発時刻が近づいていた。「ちょっとだけいいですか?」。ゲストとしてロケに参加した大瀬良大地と今村猛は、小走りで土産物売り場へと消えて行った。

戻ってきた2人は、スタッフ全員分の紙袋を抱えていた。「2日間ありがとうございました。楽しかったです」。快活な言葉を発する大瀬良の横で、今村は、両手で「うやうやしく」紙袋を抱え、頭を下げながらスタッフ一人一人に土産物を渡していた。

あれから6年以上が経った。今年10月14日、カープから来季の契約を結ばない選手が発表された。その中に、今村の名前があった。

質の高い快速球、変幻自在のフォークボール、チームの3連覇の原動力でもあった。ただ、真っ先に思い出すのは、あの紙袋を手にした控えめな笑顔である。

取材メモに並んでいた今村の価値観を物語る言葉

2009年のドラフト1位指名でカープに入団した。プロ12年、431試合に登板した。3連覇の間は、「67試合、68試合、43試合」、粉骨砕身のフル回転だった。

寡黙で口数は多くはない。投球について多くを語ることもなければ、活躍ぶりに胸を張ることもなかった。マウンドでも同様である。ガッツポーズもなければ、大声で吠えることもない。投球フォームは極めて無駄がなく、抑制された動きの中から快速球を生み出していた。

我々メディアからすると、凄みや人柄を伝えることが容易な選手ではなかった。ただ、もっと「本質」を伝える義務が我々にはあったと思う。

過去の取材メモを整理すると、今村の価値観を物語る言葉が並んでいた。まずは、球団歴代最多の115ホールドについてである。「野球は9回まであるスポーツです。その中で、先発の勝利を消さないこと。そして、後ろの投手に良い形でつないでいく。そういう気持ちでマウンドに上がっています」。

先発でも成功しただろう。ストッパーであっても、一流の成績を残しただろう。しかし、今村は、両者をつなぐ仕事で光り輝いた。

「目立たないかもしれませんが、先発の作ってくれた試合の流れをつなぐことにやりがいを感じています。得点の奪い合いになれば、相手を三者凡退に抑えることは大事にしています」

どこまでも、フォア・ザ・チームの選手だった。試合展開を考えながら、間合いやリズムにも気を配った。少ない球数で抑えることも意識した。一球一球、同じ球種でもスピードや曲がり幅を考えながら投げていた。

どこまでも仲間のために、腕を振り続けていた

あの栄光の時間も、チームのことを考えていた。清峰高校3年の春、チームのエースとして長崎県勢初の甲子園全国制覇を成し遂げた。44イニングで1失点、防御率0.20。ときに三振を狙い、ときに打たせて取る。ペース配分も考えながらの「大人のピッチング」は、チームのことを考えるがゆえのスタイルだった。

「当時、チームに投手が少なくて、僕がある程度投げるしかない状況でした。そうすると、次の試合のことも考えて投げる必要がありました。試合の展開に応じて三振を狙うこともあれば、打たせて取る場面もあります。そういった中で、投球の楽しさがわかるようになりました」

一方で、プロ野球の世界に飛び込むと、2年目からは連日のリリーフ登板である。「登板数が増えることは必要とされることの証明です。それは、嬉しいことです」。文字にすれば優等生の匂いがするコメントではあるが、飾り気とは無縁の今村である。どこまでも仲間のために、腕を振り続けていた。

もちろん、プロフェッショナルである。どれだけ投げてもパフォーマンスを落とさない「燃費の良い」動きも追求していた。「ストレートの力をアップさせるため、フォームの無駄を省くことは考えました。大事なところで力を入れます。体の回転するところです。フォークも抜くイメージからしっかり投げるイメージに変えることで、思うように操作できるようになりました」。調子や状況に応じて、鋭いフォークやチェンジアップ気味のフォークを投げ分けた。コントロールを意識するのはもちろん、フォークを投げることが見抜かれないようにマウンドでの仕草にも気を配っていた。

淡々と投げるイメージが強いが、ボールの強さの裏には、強靭な下半身があった。マウンドを蹴る右足は、「試合後はパンパンになる」くらいの出力だった。高校時代は、足がつるまで走ったこともある。やはり、見えない努力があったのである。

そういえば、番組ロケで、こんなことがあった。移動中に、MCが台本に書かれたクイズの答えを事前に口にしてしまったのである。本番。彼は、答えを知りながら間違った回答をした。もちろん、ポーカーフェイスだった。

マウンドでも、グランドの外でも、今村猛は気配りの人だった。だからこそ、あの勇姿をまだ見たい気もするし、ゆっくり休んで欲しい気もする。

さて、ロケを終えた空腹の電車内。紙袋を開けると、長崎名物のカステラが入っていた。甘い香りが漂ってきたが、口にせず包装紙に包み直した。その優しさに触れるには、まだ早いと思ったからだった。

(※引用元 文春オンライン

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