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「江夏の21球」のウラで、古葉監督が考えていたこと…/裏面史探偵

2021年12月6日

「江夏の21球」のウラで、古葉監督が考えていたこと…/裏面史探偵

衣笠祥雄の気遣い

広島を4度のリーグ優勝と3度の日本一に導いた古葉竹識が、さる11月12日、85歳で亡くなった。広島が初めて日本一になったのは1979年のシーズンである。「江夏の21球」で幕を閉じた近鉄との日本シリーズは今も語り草だ。

3勝3敗で迎えた第7戦、舞台は大阪球場。広島が4対3と1点リードの9回裏、無死一、三塁の場面で“事件”は起きる。古葉監督が池谷公二郎、北別府学両投手にブルペンでの投球練習を命じたのだ。

それを目にしたマウンド上の江夏が「何をしとるんや!」と激怒、ファーストの衣笠祥雄が「オマエがやめるなら、オレも一緒にやめる!」と言葉をかけ、平常心を失いかけていた江夏の気持ちをバッターに向かわせたのは有名な話である。

その時の気持ちを、後に江夏はこう語った。

「自分の気持ちがどうこういう前に、局面だけから言っても、それはもう苦しいわけよ。マウンドに立つ自分の後ろには7人の選手が守っている。真正面にはキャッチャーが構えている。ベンチの中にも選手が控えている。ただ、あのときに誰が自分の気持ちを理解してくれていたか……。そう考えると、やっぱりあれは嬉しかったよね」

声をかけた衣笠はどんな気持ちだったのか。

「あのときは、ものすごく疲れていたの。第7戦まで死闘を尽くしてきたわけだからもうヘトヘトで、とにかく早く試合を終わりたかった。“この9回で全て終わる。早く帰りたい……”と思っていた。延長戦を戦う気なんてなかった。

それで声をかけにいったの。とにかく、この回で決着をつけて試合を終わらせたい。そのためには、とにかく江夏を冷静にさせなきゃいけないと、その一心だったのが正直なところだと思う」

実は衣笠、マウンド上で先の言葉をかけた後、こう続けている。

「変に内野ゴロ打たすなよ。そいつがエラーしたら一生、傷つくからな」

このあたりが、衣笠の人格者たる所以である。

古葉監督が江夏に明かした「胸の内」

もとより古葉に江夏を代える気持ちはなかった。

古葉の回想。

「江夏の中には“ここで代えられるのか”という悔しい気持ちがあったのかもしれない。もちろん、僕にそんな気持ちは全くなかった。ウチに江夏以上のピッチャーはいませんから。

ただ、江夏はもう3イニング目に入っていたんです。監督の仕事として、同点になった場合、次の江夏の打席ではピンチヒッターを使わなきゃいけない。延長にいく可能性もありましたから、次のピッチャーも用意しなきゃならんわけですよ。だから北別府と池谷に“投げられるように一応肩だけはつくっておけよ”といってブルペンに送り出したんです」

絶体絶命のピンチを切り抜けた江夏は両手をあげてマウンドを駆けおり、キャッチャーの水沼四郎とがっちり抱き合った。古葉は大阪のくもり空を見上げながら、5度宙を舞った。

しかし、シーズンが終了しても、古葉と江夏の間にはわだかまりが残った。

年が明け、シーズンインを間近に控えたある日のことだ。

古葉に向かって、不意に江夏が切り出した。

「監督、オレは去年のことがまだ頭から離れないんや」

古葉は答えた。

「あの時のことか……。延長戦に入ったときのことを考えてみてくれ。ピッチャーを用意するのは監督の仕事なんだ。あの回に代えることは絶対になかったし、もし延長に入ってもオマエが“行く”というのなら、そうさせていたかもしれない」

「そうやったんですか。わかりました」

この年もカープはリーグ優勝を果たし、再び近鉄との対決となった日本シリーズも制し、2年連続日本一となる。赤ヘル軍団が最も輝いた時代である。(敬称略)

(※引用元 現代ビジネス

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