野球において“扇の要”と呼ばれ、チームの核となるのがキャッチャーだ。では現役プロ野球選手のなかで「ナンバーワン捕手」は誰になるのか。肩の強さやリード、打力など様々な評価項目があるので、ファンの間でも意見の分かれるところだろうが、「プロ」の目から見ると、誰が選ばれるのだろうか──。
今年は夏の東京五輪で侍ジャパンが金メダルを獲得したが、主にスタメンマスクをかぶったのはソフトバンクの甲斐拓也だった。その強肩は“甲斐キャノン”の愛称で広く知られている。当初、もう一人の捕手は広島の會澤翼が選出されていたが、故障で辞退したことによって追加招集されたのが梅野隆太郎(阪神)である。今季は前半戦でチームが首位をひた走り、ファン投票でセ・リーグのオールスターにも選出された。
パ・リーグでオールスターにファン投票選出されたのは、打力に定評のある森友哉(西武)。2019年には、捕手として史上4人目となる首位打者に輝いており、今季も.309でリーグ2位の打率を記録した。ちなみに、オフに更改された年俸で見ると森と甲斐が2億1000万円(推定)で捕手としては球界最高の評価で並んでいる。
本誌・週刊ポストの1月4日発売号では「2022大予言」と題した特集のなかで、野球評論家の江本孟紀氏、中畑清氏、達川光男氏による座談会を掲載し、プロ野球の来季の展望を語り合ってもらった。紙幅の関係で収録しきれなかったが、取材現場では巨人や日本ハムのキャッチャー陣に対する不安などの話題から派生して、「球界ナンバーワン捕手」の議論にも話が及んだ。
3度のリーグ優勝、2度の日本一という黄金時代にあった1980年代の広島で正捕手を務めた達川氏は12球団ナンバーワンのキャッチャーについて、こう答えた。
「日本一になったヤクルトの中村悠平だろうね。上手になりましたよ。リードが“簡単”になった。フォアボールが滅茶苦茶減ったからね」
2021年のヤクルトは143試合を戦って、ピッチャーが出した四球の総数は363。昨年は120試合で404のフォアボールを出していたから、たしかに激減している。
「フォアボールを出すとピッチャーの出来が悪いとよく言われるが、キャッチャーの配球も悪いんですよ。江本さんのストレートと“エモボール”のように、ストライクを取れる球種が2つあればいいんですが、今のピッチャーはそれをできるやつがいない。相手バッターが真っすぐを待っているから、とスライダーを投げてボールになる。中村はそういうピッチャーの扱いが上手くなったね。ヤクルトで絶対にええというピッチャーは奥川(恭伸)くらいで、あとは高梨(裕稔)とか、ちょっと間違うとストライクが入らなくなって、どうリードするか苦労するメンバーだからね」(達川氏)
中村は今季のゴールデングラブ賞とベストナインを受賞。それはプロの目から見て納得の評価なのだろう。
(※引用元 NEWSポストセブン)