キャンプイン間近の日本プロ野球。すでに今年は3年ぶりに延長戦の復活が決まっている。各チームとも、投手運用に関してコメントが出ているが、実際にはどの程度の影響が出るものなのだろうか?
延長戦アリで1チーム約20イニングの増加
実際にコロナ前の延長戦があった2019年と、昨年の投手が投げた総イニング数を比較するとこうだ。
2019年 15336 1/3回
2021年 15054 2/3回
差 281 2/3回
これを1球団あたりでみると23.5回の差、9イニング1試合と考えれば約2.5試合分となる。ちなみに2018年と比較しても19.3回の差で約2試合分だ。
ちなみに昨年2021年の1チーム平均総イニング数は1254.6イニングなので、延長によるイニング増加率は1.9%にしかならない。なんだ、その程度なら軽微な差だろうと感じるかもしれないが、実際は数字通りとはいかない。その理由は登板数でわかる。
登板数の増加が投手運用に影響
イニングの増加は延長で約2%程度しかないが、延長戦となる試合では当然投手をつぎ込む人数が増える可能性が高い。実際に2019年と2021年の投手登板数を比較してみよう。投手に代打が送られやすいセ・リーグとパ・リーグは分けて考えねばならない。
セ・リーグ
2019年 3709人(2021年比1.9%増)
2021年 3640人
パ・リーグ
2019年 3782人(2021年比5.5%増)
2021年 3584人
なんとも変な結果が出てきてしまった。本来なら代打が送られやすく投手登板総数が増えやすいセ・リーグよりも、2019年のパ・リーグは登板投手数が大幅に上回ってしまったのである。
日本ハムの投手起用数が突出
この数字の原因は2019年、5位に沈んでいた日本ハムが延べ684人もの投手を1年間に登板させていたためである。この年パ・リーグの日本ハムを除いた5球団の平均年間登板人数が619人なので、日本ハムの突出っぷりが目立つ。
この年、日本ハムは7月終了時点で2位と優勝争いに加わっていたが、8月に投手陣が崩壊し5勝20敗1分と大失速。早々に打ち込まれる試合が多く投手の起用数が格段に増えてしまったのが原因である。
パ・リーグは日本ハムの極端な数字の影響が強く出てしまったが、セ・リーグを見るとわかりやすい。先程延長戦で1.9%のイニング増とあったが、起用する投手数も1.9%と全く同じ増加となっているのである。
1人投手を増やさねばならない
この数字の意味は大きい。延長戦で増加するイニングと、起用する投手数の増加が一致しているということは、単純に投手を1人戦力として増やさねばならない、ということだ。延長戦になるということは接戦。勝ちにも負けにも引き分けにもなりうる緊迫した状況で増やすべき投手は、れっきとした「戦力」でなければならない。
この「戦力」たる投手を1枚増やすことができないと、2019年の日本ハムのように終盤失速を招く危険があるということもいえるのではないだろうか。2022年のプロ野球、注目すべきは「昨年戦力ではなかった投手が1人増え、1軍の戦力として活躍できるかどうか」がカギなのかもしれない。(佐藤永記)
(※引用元 日刊SPA!)