最強の外野陣と聞いて思い浮かべるのはどの布陣だろうか。巨人の松井秀喜、高橋由伸、清水隆行は破壊力抜群だった。オリックスのイチロー、谷佳知、田口壮は個々の打撃能力が高いだけでなく、鉄壁の守備陣でも知られた。阪急の黄金時代を支えた福本豊、簑田浩二、バーニー・ウィリアムスも印象深い。守備陣で言えば西武の秋山幸二、羽生田忠克、平野謙も俊足、強肩でチームのピンチを再三救った。
その中で、1990年代から2000年代にかけて、広島で活躍した前田智徳、金本知憲、緒方孝市の「外野トリオ」も個性的で強烈だった。史上唯一の三冠王を3度獲得した落合博満に一目置かれた天才打者・前田、鋼のような鍛え上げられた肉体で世界記録の1492連続試合フルイニング出場を達成した金本、走守走3拍子そろったプレースタイルで全盛期はメジャー・リーグで通用すると評された緒方……。「広島最強外野陣」であなたが最も好きだった選手は誰だろうか。
ケガと闘った天才打者
※前田智徳(広島)
通算2188試合出場、打率.302、295本塁打、1112打点、68盗塁
誰もが認める天才打者だった。好機では極限まで集中力を高め、投手が「どこに投げても打たれる」と恐れるほど。本塁打を打っても無表情のままダイヤモンドを一周する。目立つことを嫌がり、メディアの前に姿を現すことが少なかった。その野球人生は故障との闘いだった。1992年から3年連続打率3割をマークするが、95年5月23日のヤクルト戦(神宮)で二ゴロを打った際、一塁への走塁時に右アキレス腱を断裂。選手生命の危機に陥る大ケガを負って以降は万全の状態でプレーできなくなったが、その後も打率3割を8度マークするなど主軸として安打を打ち続けた。
2000年シーズン途中に左アキレス腱の状態が悪化し、7月に腱鞘滑膜切除手術を受ける。翌01年は27試合の出場のみだったが、02年に打率.308、20本塁打でカムバック賞を受賞。05年は12年ぶりの全146試合先発出場で打率.319、32本塁打、87打点で自己最多の172安打を放った。晩年は代打の切り札を務め、広島一筋24年間の野球人生で通算2119安打をマーク。現役引退後は寡黙なイメージが一変。野球評論家で饒舌なトーク術を展開し、ファンを魅了している。
球界を代表する強打者となった鉄人
※金本知憲(広島、阪神)
通算2578試合出場、打率.285、476本塁打、1521打点、167盗塁
野球に向き合うストイックな姿勢、並外れた練習量で球界を代表する強打者として活躍した。広陵高から1年浪人して進学した東北福祉大で主力として活躍。広島にドラフト4位で入団すると、ウエート・トレーニングで肉体改造に取り組み、疲労で気を失うほどの猛練習で自分を追い込んだ。1995年にレギュラーに定着すると、クリーンアップで不可欠な存在に。00年に打率.315、30本塁打、30盗塁でトリプルスリーを達成する。
FA移籍した阪神でも主軸として活躍。移籍1年目の03年にリーフ優勝に貢献すると、翌04年には自身初の打点王を獲得。05年は左打者の本塁打が出にくい甲子園を本拠地に置く阪神で自己最多の40本塁打と衰え知らずだった。また、骨折しても試合に出続ける不屈の闘志で99年から2010年まで1492連続試合フルイニング出場の世界記録を達成。通算2539安打を積み上げた。16年から阪神の監督に就任すると、2年目の17年に2位と躍進。18年に最下位に低迷して辞任したが、大山悠輔、糸原健斗、青柳晃洋ら金本政権で育成した選手たちが現在の主力に成長したことは評価されるべき点だろう。
メジャー・リーグからも熱視線
※緒方孝市(広島)
通算1808試合出場、打率.282、241本塁打、725打点、268盗塁
前田、金本は通算2000安打をマークして名球会入りしているが、緒方は1506安打。だが、身体能力の高さは間違いなく一番上だった。1995年から3年連続盗塁王、5年連続ゴールデン・グラブ賞を獲得。驚くべきことに95年は101試合出場で335打席だったにも関わらず47盗塁をマークしている。この数字は規定打席到達せずに達成したシーズン最多記録として現在も破られていない。99年は当時の日本最多タイ記録となる初回先頭打者本塁打8本をマークするなど、打率.305、36本塁打と自己最高の成績を更新。全盛期には「メジャー・リーグでも通用する」と米国の球団から熱視線を注がれた。
30代前半になるとたび重なる故障の影響で盗塁数が減ったが打撃は健在で、2002年から4年連続20本塁打をマーク。そのうち3シーズンは打率3割と高いパフォーマンスで打線を牽引した。全力プレーの代償による故障が少なくなく、規定打席に到達したシーズンは8度にとどまったが、その活躍は強烈だった。現役引退後は広島でコーチを5年間務め、15年から一軍監督に就任。16年から球団史上初のリーグ3連覇を達成し、黄金時代を築いた。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)