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伝説の「完全試合」投手・外木場が、監督に干されてから復活するまで

2022年5月6日

伝説の「完全試合」投手・外木場が、監督に干されてから復活するまで

広島の「レジェンド・オブ・レジェンド」

プロ野球が1950年に2リーグに分立して以降、ノーヒットノーランを3回(うち完全試合1試合)も達成したのは元広島の外木場義郎だけである。この偉業が認められ、2013年にエキスパート部門で野球殿堂入りを果たした。

1975年には最多勝(20勝)、最多奪三振(193個)、沢村賞などに輝き、広島の初優勝に貢献した。優勝を決めた10月15日、東京・後楽園球場での巨人戦、勝ち投手となったのも外木場だった。

広島において、オールドファンの間での外木場人気は今なお絶大である。初優勝への貢献もさることながら、万年Bクラスと呼ばれたチームを長きに渡って支えたからである。

まさに広島では“レジェンド・オブ・レジェンド”と呼ばれるほどの存在の外木場だが、もし監督が交代しなければ、彼はチームを追われていた可能性が高い。そうなっていれば75年の初優勝も完全試合を含む3回のノーヒットノーランも幻に終わっていただろう。人間の運命とは分からないものである。

外木場は電電九州から64年9月に広島に入団した。都市対抗野球が終わってからの入団だったため、この年は2軍戦でしか投げていない。

翌65年10月2日、外木場はプロ2度目の先発で、阪神相手に初勝利をノーヒットノーラン(1四球)で飾る。ノーヒットノーランでの初勝利はプロ野球初の快挙(2人目は中日の近藤真一)だった。

これほどのピッチャーなら、普通は翌シーズンからローテーションの柱だ。ところが外木場の成績を見ると、不思議なことに初勝利をノーヒットノーランで飾った翌年の66年=0勝1敗、67年=2勝3敗と、鳴かず飛ばずに終わっているのである。大きなケガをしたわけでもないのに、いったい、なぜなのか。

長谷川監督に嫌われた

本人に訊くと、「干されていた」という答えが返ってきた。外木場が入団した頃の投手コーチ、65年途中から監督に昇格した長谷川良平のお眼鏡にかなわなかったというのである。

長谷川といえば、弱小チームの広島にあって通算197勝をあげた、球団草創期の大エース。身長167センチと小柄だったことから“小さな大投手”と呼ばれた。

外木場によると、「長谷川さんはコントロールの悪いピッチャーを嫌った」。自身がシュートを武器に、ゴロを打たせて取るタイプだっただけに、剛速球と大きなカーブで三振をとりまくる外木場のピッチングに対しては「嫉妬を覚えていた」との指摘もある。今さら、それを証明する術はないが、外木場が干され続けたのは事実である。

それについて、外木場はこう語っていた。

「長谷川さんは本当に厳しかった。自分の思いどおりにならんヤツは使わないんだから。僕は事あるごとに“コントロールが悪いんやから、スピートを落としてでも制球力を身につけろ”と叱られた。しかし、僕は長谷川さんの言うことに従わなかった。“スピードが落ちたら、僕の持ち味はなくなります”と。すると、本当に使ってもらえなくなった」

自分の意に沿わない者は冷遇する。一般の組織にもよくあることだが、冷や飯を食わされる方はたまったものではない。ましてプロ野球選手は寿命が短く、1年1年が勝負である。使ってもらわなければ給料も上がらない。

外木場はクビを覚悟した。トレードなら、まだいい方だ。

しかし、捨てる神あれば拾う神あり――。67年のオフ、長谷川は最下位の責任をとるかたちで退任し、根本陸夫がコーチから監督に昇格する。球場2階のレストランで外木場に向かって、根本はこう言った。

「今度、オレが監督になった。ひとつ頼むわ」

翌68年、外木場は45試合に登板し、21勝14敗、防御率1.94という好成績で最優秀防御率投手に輝く。40試合に先発し、完投19、完封6。干されていた2年間のうっぷんを一気に晴らしたのだ。もし、“空白の2年間”がなければ、もう1回くらいノーヒットノーラン、いや完全試合を達成していたのではないか。若い頃の外木場には、そう思えるくらいの爆発力があった。

(※引用元 現代ビジネス

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