柳の短所と堂林の長所が、パズルのようにカチリとはまった。そんな一球でいきなり試合は動いた。
「初球から思い切りいきました」。選手7人と佐々岡監督を含む11人が新型コロナに感染した。チームを襲った緊急事態に、野間に代わって1番で起用された堂林は、最も得意な初球をフルスイングした。2回は1ボールから中前に打ち返し、5回は1ボールから7号を左翼ポール際に打ち込んだ。
堂林は第1ストライクに最も強い。今季は初球打率が5割(16打数8安打)で、第1ストライクは4割2分4厘(33打数14安打)。そして、柳は第1ストライクが最も弱い。会沢のタイムリー二塁打も、矢野のプロ1号2ランもそうだった。打たれた9安打中、実に7本が第1ストライク。柳にやられ続けていた広島は、間違いなく策を練っていた。「とにかく積極的に振っていこう」。第一球を堂林が仕留めたことで、一気に勢いづいたのだ。
この日で一気に悪化したこともあるが、柳の初球被打率は3割6分5厘で、第1ストライクではセ・リーグの規定投球回数到達者の中ではワーストの4割2分6厘だ。一方で2ストライクを取れば、リーグ4位の1割6分1厘。第1ストライクに弱く追い込んだら強い。ただし、これは以前からの長所であり、短所だった。2冠に輝いた昨季も第1ストライクは3割9分3厘で、2ストライク後は1割4分3厘(リーグ1位)。つまり、打者はこう考えている。
「柳を相手に待っていていいことはない。多彩な球種から絞って、振っていこう」
1回の堂林は恐らくストレートに張っていた。だから2回は変化球を頭に入れて、5回は再びストレートを待った。誰しも第1ストライクの被打率は悪くなりがちだが、阪神・西勇のように初球1割1分9厘、第1ストライク2割1分と得意な投手もいる。いかに追い込むか。柳が白星をつかむポイントは、ここに尽きる。
(※引用元 中日スポーツ)