クライマックスシリーズ(CS)出場権を巡り、阪神、巨人と熾烈な競争を繰り広げる広島。シーズン途中加入で攻守の要として奮闘していた秋山翔吾がコンディション不良で9月10日に登録抹消されたのは大きな痛手だが、その穴は全員でカバーするしかない。シーズン終盤は主力選手たちの活躍がチームの命運を大きく左右する。打線のキーマンになるのが、西川龍馬だ。
チームメートだった同学年の鈴木誠也(カブス)が「天才」と評する巧打者は、開幕から一番に抜擢されて打線の起爆剤になった。白星を重ねて春先は快進撃を繰り広げていたが、6月上旬の交流戦中にアクシデントが起きる。下半身のコンディション不良で戦線離脱。患部の状態が思わしくなく、一軍の舞台に復帰するまでに2カ月を要した。
チームは借金生活に入ったが、再び上昇気流に乗るためには、西川の存在は不可欠だ。9月上旬に四番に抜擢されるなど中軸を託され、規定打席には到達していないが打率3割台をキープ。9月16日のDeNA戦(横浜)では1点差を追いかける6回一死二塁で濱口遥大のスライダーを左翼線に運ぶ適時二塁打。外角低めに変化するボール球だったが、右手一本で払うようにヒットゾーンに飛ばした。あの球を打てる打者はなかなかいない。打撃センスが凝縮された一打で逆転勝利の足掛かりを作った。
広島の先輩も絶賛
かつてチームメートだった球団OBの新井貴浩氏は2020年に週刊ベースボールのコラムで、西川についてこう綴っている。
「龍馬は見た目こそ“イマドキのオシャレなお兄ちゃん”みたい感じですが、中身は物事についてしっかりとした考えを持っていて、そのギャップも魅力的な選手だと思います。練習に取り組む姿勢など、すごく真面目ですしね。コツコツ、コツコツと、こなしていっています。あと、龍馬と言えば、皆さんもご存じのとおりの“バッティングセンス”。私も初めて見たときから本当にビックリでした。『なんだ!? すごいな、このバットコントロールは!』って、目を丸くしましたね」
「対戦相手からしたら、すごく厄介なバッターだと思います。だって、対策のしようがない部分もありますからね。低めのワンバウンドするようなボールを打ったかと思ったら、今度は顔ぐらいの高さのボールをホームランにしたりする。おまけに、インサイドの、ボール気味のところでも、すごい打ち方をしてセンターにもっていったり。キャッチャーの要求どおりに投じて『よし、OK!』と思ったら、そこをパカーン! と打ち返されるピッチャーの気持ちを考えると……。『どこに投げればいいの!?』ってなりますよね」
首脳陣にとって頼もしい選手
そんな西川は今オフの動向が注目されている。故障者特例が加算され、8月下旬に国内FA権を取得。「広島愛」が強い選手だが、FA権を行使すれば複数球団による争奪戦になることは間違いないだろう。
「故障が多く規定打席に達したのは2シーズンのみだが、打撃センスは球界屈指。まだ27歳と若いのも魅力です。クリーンアップを打てるし、チャンスメークもできる。首脳陣にとってこれほど頼もしい選手はいない。セ・リーグの球団は特に欲しいと思います。当然、広島も慰留に全力を注ぐことになるでしょう」(スポーツ紙デスク)
ペナントレースは残り6試合。今はFA権のことは頭の片隅にもないだろう。逆転でCS進出に向けて白星を積み重ねる。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)