日本野球機構は7日、12月9日に行われる「現役ドラフト」の実施方法を発表。出場機会の少ない選手の移籍活性化が目的だが、紆余曲折を経た初の試みを骨抜きにしかねない、一部球団の〝脱法行為〟に選手会が激怒している。
公表された規定は10項目。各球団がドラフトに選手2人以上を供出し、他球団から獲得希望を最も多く受けた球団が1番目に希望の選手を指名できる。1番目の指名を受けた球団が、次に指名ができるという流れだ。
ドラフト対象になる選手にはさまざまな制限がある。各球団とも年俸5000万円以上1億円未満は1人まで、ほかは5000万円未満に限る。また、FA資格のある選手や過去に行使した選手、複数年契約の選手、育成選手なども対象外。選手会が問題視するのは、この育成制度を利用した流出防止策だ。
先月23日に巨人は梶谷隆幸外野手(35)、中川皓太投手(28)、高橋優貴投手(25)ら大量11人への自由契約を通告。全員に育成選手としての再契約を打診する運びだ。育成選手は現役ドラフトの対象から外れるだけでなく、国内FAの人的補償も回避できる。
こうした動きは、昨年12月の選手会定期大会で森忠仁事務局長が発表した、「事務局長所感」を公然と無視するものだ。巨人が12人もの支配下選手を育成で再契約した件などに懸念を示したものの、今年もオリックスがドラフト1位ルーキーの椋木を育成契約に切り替える方針を示すなど、むしろ情勢は選手会が望まない方向に進んでいる。
森事務局長は「去年から全く状況が変わらないどころか、他球団も同じ手口でやりだしている。育成選手が人的補償の対象から外れていることが抜け道に使われるなら、対象とすべき。現役ドラフトも同様です」といらだちを隠さない。
一方で巨人側にも言い分はある。球団幹部は「ルールに従って行っていること。ケガをしている選手は育成契約とすることで焦らずにリハビリができるという面もある。そもそも現行の70人という支配下の枠が適正なのか」と反論。支配下の人数が少なすぎるゆえの防衛策だと主張する。
現役ドラフトの実効性に疑問を投げかけ、ルールの抜け穴を率先してくぐってきた球界の盟主にしてみれば、支配下枠の議論に持ち込むことこそが真の狙いなのかもしれない。(片岡将)
(※引用元 夕刊フジ)