ベンチの最前線で張り上げる中村健人の“声”は、よく通る。ルーキーイヤーは出場こそ63試合ながら、出番がなくても存在感は際立っていた。「その日に先発メンバーとしては勝利に貢献できなくても、僕には声がある」。一軍定着をつかみとった武器でもあった。
一軍にいながら、出場機会がないままゲームセットを迎える試合も多かった。「周りからは『チームを盛り上げて、すごいね』という、ありがたい言葉も掛けていただいたりしたけど、自分を鼓舞していたというか……折れそうな心を自分の声で保っていた感覚もありました」。常に誰よりも試合に入り込む気持ちを保って、限られたチャンスに備えた。
中京大中京高から慶大、トヨタ自動車を経てプロ入り。“エリート”のイメージとは対照的なハツラツさは、来季のチームキャッチフレーズ『がががが が むしゃら』とも重なる。「声はいつでもプラスになる。その上で打ったら最高だし、守ったら最高」。強烈なプラス思考は、成長への大きな原動力にもなる。
1年目は「いい意味で欲につながる1年間だった」と振り返る。「3本塁打も打てるとは思っていなかった。来年はもっと。10本、15本打ちたい思いにつながった」。プロ1号はヤクルト・石川雅規、2号はDeNA・今永昇太とセ・リーグ屈指の左腕から。
「守備面、走塁面は今まで培ってきたもので勝負できるし、これを磨いていけばという手応えもあった。やはり打撃で貢献することがカギ」。外野勢は秋山翔吾を筆頭に西川龍馬、野間峻祥らがいる。レギュラーの壁は高いが、その牙城に挑む。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)