勢いある打撃で今シーズンもここまでセ・リーグの首位を走る広島。5月4日現在、チーム最多の猛打賞獲得回数は3回で、3選手が記録している。不動のレギュラー・菊池涼介と田中広輔と並ぶもう1人が野間峻祥だ。
シーズン序盤こそ調子が上がらなかったものの、4月21日の中日戦(ナゴヤドーム)からスタメン起用された4試合のうち3試合で猛打賞と、高確率で結果を残している。
2015年ドラフト1位で入団した野間は、強肩を生かした守備と50メートル5.8秒の俊足を生かした走塁に定評があり、17年は守備固め、代走要員としてリーグ連覇に貢献した。一方で、打率.189 、出塁率.259と打撃の課題は顕著だった。
特に幸か不幸か、ランナーを得点圏に置いた場面で打席が回ってくることが多く、得点圏打率は.050(23打席1安打)。打てないイメージをさらに強くした。
ルーキーイヤーから人一倍濃い打撃練習を行ってきた野間。
コーチ陣は“これだ”という形をつかんでもらうべく、時にゴルフスイングのような素振りをさせてみたり、時にトスするボールを徐々に高くしながら打たせてみたりと、さまざまな方法で打撃開眼を目論んだ。
だが、実戦では思うようなバッティングができず。簡単に打ち取られてしまう野間の姿は第三者から見てももどかしかった。
しかし今季はひと味違う。ようやく何かをつかんだようだ。
課題に取り組む野間を近くで見てきたチームメートも活躍を喜んでいる。プライベートでも仲がいい鈴木誠也は、ベンチから野間の打席を見届ける際は誰よりも大きい声で声援を送り、ヒットを打てば笑顔をはじけさせる。
丸佳浩は結果を出しベンチに戻ってきた野間の頭をヘルメットの上から力いっぱいたたく手荒い祝福。菊池は自身がお立ち台に上がった際に「最近、野間にヒーローとか猛打賞とかとられていたんで」といじってみせた。
「たまたまです」。今季3回目の猛打賞となった5月1日の巨人戦(マツダ広島)で、ルーキーイヤー以来となる久しぶりの本拠地のお立ち台へ。打撃の状態を問われ、そう答えた野間の表情からは少しだけ自信が垣間見られた。
守備、走塁だけでなく打撃でも存在感を。チャンスで結果を残せず苦汁をなめてきた15年ドライチの努力がいま、実を結ぼうとしている。(文=菅原梨恵、写真=太田裕史)
(※引用元 週刊ベースボール)