固定するのか、使い分けるのか
第5回ワールドベースボールクラシック(WBC)に出場する日本代表「侍ジャパン」でクローザーを務める投手は誰になるだろうか。
チームで実績があるのは通算197セーブの松井裕樹(楽天)、2021年新人王の栗林良吏(広島)、2022年新人王の大勢(巨人)。さらに2022年最優秀中継ぎ投手の湯浅京己(阪神)、育成から支配下登録されて半年で日本代表入りした宇田川優希(オリックス)も展開によっては最後を締めることもあるだろう。
栗山英樹監督がクローザーを固定するのか、複数人を使い分けるのか分からないが、どの投手をどの順番で起用するのか悩ましいに違いない。松井、栗林、大勢の3人の2022年の投球データは以下の通りとなっている。
奪三振率の松井、実戦向きの栗林、安定感の大勢
実績で言えば、3人の中で松井が最上位だ。桐光学園高からドラフト1位でプロ入りして10年目。一時期先発を務めたこともあるが、キャリアのほとんどをクローザーとして送り、通算23勝43敗197セーブを挙げている。
今季中の200セーブ達成はもちろん、順調にいけば来季中に名球会入りの条件でもある250セーブに到達しそうだ。緊迫の場面を何度も経験しているのは頼もしい。
2022年の成績で比較すると奪三振数は3人の中で最多の83個。奪三振率14.46はモイネロ(ソフトバンク)に次いで12球団2位だ。栗林の10.99、大勢の9.47を大きく上回っている。ここ一番で三振を奪える能力はクローザーとして大きな武器だろう。
また被安打も21で最少。被打率.122は、栗林の.133、大勢の.189より低い。打たれないことは大きな強みだ。
一方、栗林が3人の中で最上位の数値を示しているのは防御率。48.1回で自責点わずかに8、1.49は立派な成績だ。敗戦も2で、わずかの差だが3敗している2人より少ない。奪三振率は松井より低くても、点を与えないという意味ではより実績向きと言えるかも知れない。
大勢はまだプロで1年のキャリアしかないが、2015年の山崎康晃(DeNA)、2021年の栗林に並ぶ新人最多タイの37セーブをマークした。イニングは57回で2人より多いが、与四球は13で2人より少ない。制球力は最も安定していると言えそうだ。
栗山監督の決断は?
昨季のデータで比較すると、通常の最終回頭から登板する場面では栗林、三振が欲しい場面や左打者に対しては松井を使い分ける手だろうか。
ただ、昨季の松井は対右打者が被打率.088、対左打者が同.186と右打者の方が相性が良い。逆に栗林は対右打者が被打率.172、対左打者が同.109と左打者の方が抑えている。単純に右か左かだけで使い分けを決めることはできない。
WBCでは2連投した場合は中1日空ける規定が設けられており、延長10回からタイブレーク(無死2塁)が採用される。そのため、連投状況やその時のコンディション、試合展開などで大勢、あるいは湯浅や宇田川を後ろに持ってくる可能性もあるだろう。
いずれにせよ、日本が誇るハイレベルの最強リリーフ陣であることは間違いない。2009年はダルビッシュ有が胴上げ投手となったが、今回もし優勝すれば、その栄誉に浴するのは誰だろうか。
(※引用元 SPAIA)