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「達川引退試合」VHSテープに記録された『エモエモ』な試合の真実

2023年7月18日

「達川引退試合」VHSテープに記録された『エモエモ』な試合の真実

年末の大掃除で、とてつもなくエモいものを見つけてしまった。ラベルに「達川光男引退試合」と書かれた、1本のVHSテープである。

1992年10月4日。あの日、16歳の私は横浜高島屋の食料品売り場にいた。前年の日本シリーズでカープファンになってから1年。関東在住で新規ファンの私は、毎日スポーツ新聞を読み、テレビやラジオで情報収集をしていた。なのに知らなかった。初の推し選手である達川光男の引退を。

食料品売り場で買い物をする母の傍らで、ウォークマンのラジオ機能を使い、広島vs巨人最終戦を聴いていた私。アナウンサーのとんでもない一言が耳に飛び込んできた。「達川は、この試合をもって引退となります」。

いやマジで聞いてない。ちなみにダチョウ倶楽部の「聞いてないよォ」が流行語大賞を受賞したのは、達川引退の翌年、1993年のことである。私は母を放置。ダッシュで帰宅しテレビをつけ、VHSデッキのRECボタンを押した。

そんな思い出のVHSテープが出てきたのだ。しかし、ビデオデッキはとうの昔に動かない。仕方がないので、業者に依頼しデータ化。約30年ぶりに引退試合を再生してみた。

二元中継だった引退試合

映像は、20時5分、7回ウラのカープの攻撃から始まった。2−6でカープが勝っている。名残の雨というには降り過ぎな程ザーザー降りの中、試合はハイペースで進んでいるようだ。バッターボックスには背番号5、町田公二郎である。対戦相手・巨人のピッチャーは、その後『明石家サンタ』の常連となる木田優夫だ。と、ここでカメラが横浜スタジアムに切り替わる。なんと、この日のフジテレビは、広島市民球場と、横浜スタジアムの横浜大洋vs阪神27回戦の二元中継を行っていたのだ。当時の野球人気を窺わせる。

晴れた横浜スタジアムは5回ウラ、2−0で阪神が勝っている。バッターは背番号3、今や解説者でおなじみの高木豊だ。対する阪神のピッチャーは、後に寿司職人に転身して渡米した猪俣隆。追い込まれたものの、持ち前の選球眼でフォアボールを選ぶ高木。ノーアウト満塁である。そんな最高潮の盛り上がりにも関わらず、カメラは再び広島市民球場に切り替わった。達川が、人生最後の打席に立つ瞬間が来たのだ。

代打で起用された達川は、最初は笑顔でバッターボックスに入っていた。ところが、主審や巨人のキャッチャー・村田真一に何か声をかけられ、あっという間に泣き顔に。そして1球目を打ち、バットを折りながらのボテボテのショートゴロ。アナウンサーは言った。「市民球場のファンは知りません。達川がどうして涙を流しているのか知りません。まだ引退のアナウンスがありません」。

なるほど、やはり突然の引退表明だったのか。当時の私がこの実況を聞いて納得したのかは記憶にないが、とにかく泣きながらテレビにかじりついていたことはよく覚えている。

一方の横浜スタジアムは、2−2の同点に追いついていた。さあ逆転か!?という場面で、またもや画面は雨の広島市民球場に。先ほどから、大洋ファンなら許せないであろう切り替えの連続だ。

カープはいつの間にか8回表、ワンナウト二、三塁のピンチを迎えていた。ピッチャーはまだ痩せている佐々岡。もちろんキャッチャーは前の回に代打で出た達川だ。バッターは篠塚。篠塚利夫から篠塚和典に改名したのがちょうどこの年だ。ここで、令和ではまず成立しないプレイを見ることとなる。

佐々岡が投げたワンバウンドの球が、篠塚のバットに当たって一塁ベンチ方向に転がる。それが何故かワイルドピッチとされ、1点献上してしまったのだ。達川は選手人生最後の抗議をするも認められず、失点となってしまった。リプレイ検証が無い時代だからこそのミスジャッジである。この回のジャイアンツの攻撃は、この1点に終わった。

ここで初めてCMが入った。リンス・イン・シャンプーのリジョイ。リンス効果がアップしたらしい。ジャン=クロード・ヴァン・ダムが、「眠気スッキリ!」と言いながらロッテのブラックブラックガムを掲げている。缶コーヒーJIVE のCMには俳優の細川俊之。数年後には、日本人初のメジャーリーガーとなった野茂英雄と、ドジャースのラソーダ監督がCMに起用された、あのJIVEだ。

達川の人となりを勝手に感じて泣いている2023年の私

8回裏のカープの攻撃は、ピッチャー石毛に対して三者凡退に終わる。実況がとんでもないことを言っている。1992年のシーズン、巨人は一時最下位まで落ちたが、そこからネックレスのお陰で14勝1敗で這い上がってきたらしい。藤田監督が主要選手につけさせた、あの水晶のネックレスだ。

藤田監督が自身の体調が良くなったということで、原や駒田、石毛につけさせ話題になった水晶ネックレス。少し調べてみると、巨人の選手が身につけていたのは「ファイルド社」製のもの。一見眉唾もののような話だが、このファイルド社、なんと、あのファイテンの前身の会社だということが分かった。VHS1本で、意外なことが紐解かれていく。

私と実況アナが水晶に想いを馳せていると、ベンチの達川が動いた。守護神・大野豊を迎えにブルペンに走ったのだ。仲良くブルペンカーに乗って登場する2人。さすがに市民球場には引退のアナウンスがあったようで、沸き上がる達川コールに右手を上げて応えている。3番モスビーをショートフライ。水晶ネックレスをつけた4番原はショートゴロ。5番駒田はセカンドゴロ。クリーンナップを三者凡退に押さえ、抱き合って喜ぶ達川と大野。客席からは紙テープが投げ込まれている。引退を知らなかったはずのファンは、なぜ紙テープを持っていたのだろうか。

そして始まる引退セレモニー。達川は、ファンには「消化ゲームなのにたくさん集まってくれてありがとうございます!」とだけ言い、後は全て読売巨人軍と篠塚選手会長をいじって終わるという、達川節を炸裂させた短いスピーチを披露。そして、前田が、江藤が、野村が、ベースを投げる前の選手時代のブラウンが、達川を何度も胴上げ。それを最後まで笑顔で見守っている巨人ナインの姿に、達川の人となりを勝手に感じて泣いている2023年の私。笑顔でグラウンドを一周する達川の様子をたっぷり映していた中継は、思い出したかのように横浜スタジアムに切り替わった。だが、無情にも、過去の私はそこで録画を止めてしまっていた。代打の屋鋪は打ったのだろうか。

結局私は、一度も生で達川の試合を見ることができなかった。およそ30年後、とあるトークショーで、達川に「大昔から好きです!」と気持ちをぶつけてみたところ、「ここに来てるもんはみんなそうじゃろう」とあっさりと言われ、さらに好きになってしまったのだった。

ところで、我が家からはさらなるエモいアイテムが見つかっている。「カープヒーローインタビュー」と書かれたカセットテープだ。ラジオ観戦中に、ヒーローインタビューをちまちまと録音して編集した1本。一体何年分くらいのカープの勝利が詰まっているのかは、業者からデータが上がってきてからのお楽しみである。

(※引用元 文春オンライン

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