プロ野球の一大イベント、ドラフト会議が10月26日に開催される。今年の傾向を見ると、今までにないくらい大学生投手に逸材が集まっている。数年後のチームの運命を決するドラフト。さて、各球団どのような戦略に出るのか。今回は新井貴浩新監督のもと、5年ぶりAクラス入りを果たした広島のドラフト指名を予想したい。
【前田悠伍も捨てがたいが…】
74勝65敗4分(勝率.532)でセ・リーグ2位に入った広島。正直、この戦力でよくぞここまでの戦いができたと思う。
打線はライアン・マクブルームが昨年より大きく成績を落とし、新外国人のマット・デビッドソンがやや期待外れに終わり、実力と看板を兼ね備えた威圧感十分のクリーンアップが組めなかった。勝負どころの夏場のある試合で「4番・上本崇司」と発表された時は、失礼ながら「大丈夫か……」と思ったものだ。
投手陣も長く先発マウンドを守ってきたベテランたちに勤続疲労の気配がある。3年目の大道温貴と5年目の島内颯太郎が中継ぎで奮闘したが、絶対的ストッパーの栗林良吏に疲れが見えたのは、入団してから2年連続30セーブ以上、さらには日本代表としてWBCを戦ったことも考えれば当然のことだろう。そんなチームの危機を救ったのが、54試合に登板し4勝2敗24セーブを挙げた矢崎拓也だ。
ただ全体的に見ると、やはり投手力に不安が残る。広島は、2021年のドラフトで黒原拓未(1位/関西学院大)、森翔平(2位/三菱重工West)、松本竜也(5位/ホンダ鈴鹿)、2022年には益田武尚(3位/東京ガス)、河野佳(5位/大阪ガス)、長谷部銀次(6位/トヨタ自動車)の合計6人の大学・社会人の投手を指名した。おそらく即戦力を見込んで獲得したはずだが、このなかでなんとか今季の戦力になったのは4勝2敗の森だけだったことは、なんとも痛かった。
少なくともこのなかの半数ぐらいに来季のメドが立っていれば、1位は前田悠伍(大阪桐蔭/180センチ・77キロ/左投左打)の一本釣りという展開もあったかもしれない。
前田は身分的には高校生でも、野球センス、投球センスにかけては、すでに立派なプロ級の左腕だ。春から登板機会が少なく、いろいろ心配もされたが、台湾で開催されたU−18W杯での投げっぷりを見れば大丈夫だろう。
もちろん、この前田を1位で指名してもいいのだが、大学生投手に近未来のエース候補が居並ぶ今年、彼らのなかから獲得するのが現状を考えればベストな選択か。
ポテンシャルとスター性を兼備しているとすれば、常廣羽也斗(青山学院大/180センチ・75キロ/右投右打)、西舘勇陽(中央大/185センチ・80キロ/右投右打)が候補に挙がる。
どちらも他球団との競合が考えられるため、その時は草加勝(亜細亜大/182センチ・76キロ/右投右打)や村田賢一(明治大/181センチ・87キロ/右投右打)といったゲームメイク能力に長けた投手を指名してもいいだろう。
また地元・広陵高で同期だった石原勇輝(明治大/180センチ・85キロ/左投左打)と高太一(大阪商業大/180センチ・80キロ/左投左打)も、大学での4年間で著しい成長を見せている。ひとりでも多く投手がほしい現状を鑑みれば、彼らも指名候補に入るだろう。
【坂倉将吾のバックアップは必要】
野手はどうか。今シーズンの広島の「敢闘賞」を挙げるとすれば、捕手の坂倉将吾だろう。113試合にマスクを被って、打率.266、12本塁打。本人はまだまだ納得していないだろうが、レギュラーマスク1年目としては立派な数字だ。
来季以降も正捕手として坂倉には大きな期待がかかるが、万が一に備えて、当然バックアップも必要になる。今季は経験豊富な會澤翼がその役割を担ってくれたが、今までどおりというわけにもいかなくなるだろう。
注目選手は、社会人の城野達哉(西濃運輸/179センチ・84キロ/右投右打)。今年5月に行なわれたベーブルース杯(東海地区を中心とした社会人チームの大会)で5打席連続本塁打の離れ業をやってのけた強打・強肩の捕手だ。
そしてこの2年間、遊撃手を獲っていないのも心配だ。今季の広島はショートストップ不在みたいな1年だったが、ビシッと守れる遊撃手なら松浦佑星(日本体育大/174センチ・74キロ/右投左打)だし、将来性なら百崎蒼生(東海大熊本星翔高/180センチ・76キロ/右投右打)がイチオシだ。ただし、ふたりとも下位で獲るのは容易ではない。今年はそういう「やりくり」が難しいドラフトになりそうだ。
(※引用元 web Sportiva)