最も輝きを放った瞬間だった。10月14日のCSファーストステージ初戦のDeNA戦(マツダ広島)、1点を追う8回一死。代走で出場した羽月隆太郎は、犠打で二進した直後の次打者・菊池涼介への初球、大胆にスタートを切った。捕手が送球をあきらめるほどの完璧な三盗を決め、菊池のスクイズで本塁生還。延長11回サヨナラの劇的勝利を大きく手繰り寄せるビッグプレーだった。
神村学園高から2019年ドラフト7位で入団した身長167センチの小兵は今季、足のスペシャリストとしての存在感を発揮した。開幕二軍スタートから4月下旬に昇格すると、そこから一軍を離れることはなかった。スタメンはわずか10試合ながら、チームトップの14盗塁はセ・リーグ全体でも4位の好成績。うち11盗塁が代走で決めたものだ。
主に試合終盤の起用となる代走での盗塁は、結果によって試合の流れを大きく変えかねない。だが、「恐怖心はない」と言い切る。「シーズン中から(新井貴浩)監督と(藤井彰人)ヘッドから『出たら何してもいいから、めちゃくちゃにしてくれ』と言われている。アウトになったらしょうがないと僕は思う」と頼もしい。
もちろん代走に甘んじるつもりはない。本職は二塁。昨秋の宮崎・日南キャンプでは、新井監督から「キク(菊池)に勝てるか」と問われ、「勝てます!」と即答していた。その決意は今も同じ。「スタメンで出たいけど、まずは(後継者の)第一候補になって、そこで結果を出していかないといけない」。そう遠くない日に、球界を代表する名手を脅かす存在となるかもしれない。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)