希望を乗せた打球が、熱狂するマツダ広島の左翼席上段に飛び込んだ。10月15日のクライマックスシリーズ(CS)・ファーストステージ第2戦のDeNA戦。1点リードの6回、代打・末包昇大は今永昇太に強烈な一発を浴びせた。
前日の第1戦はスタメンで3打席無安打。「チャンスで代打を出されて悔しかった。やり返せればと思っていた」。シーズンで9打数無安打、4三振とまったく歯が立たなかった左腕を、今季最後の対戦で打ち砕いた。
開幕二軍スタートながら、終わってみれば球団の入団2年目としては2013年の菊池以来の2ケタ到達の11本塁打。8月以降に9発を放った。CSでの代打弾は、シーズン終盤の成長ぶりを象徴する一撃だ。
シーズン中から新井貴浩監督が、愛情を込めて「末包さん」と呼ぶのが定番に。「(ヤンキースの主砲)アーロン・ジャッジ」と声を掛け、活躍するたびに「(打撃のコツを)“つかんだ”と言っていましたので」などと、数々の“いじり”は期待の表れだ。
当の末包は「敵は身内にあり……」と苦笑いするが、ユーモアを交えた指揮官のゲキを意気に感じている。
新井監督は「『30本くらいは打てる』と彼、言ってましたから」と豪快に笑う。だが、今季146打席で11本塁打は、規定打席(443打席)換算で33発ペース。西川龍馬、秋山翔吾、野間峻祥が固める外野陣に割って入るのは簡単ではない。
3年目の覚醒には、オフの過ごし方が何より大事。指揮官は「1日1000本以上は振ると思う。坂道ダッシュも毎日30本は走ると思います。こちらが何も言わなくてもね」と念を押す。27歳の姿に、秋から目が離せない。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)