今季は2位で5年ぶりにクライマックスシリーズ(CS)進出した広島。2016~18年に球団史上初のリーグ3連覇と黄金時代を築いたが、19年以降は4年連続Bクラスと低迷していた。新井貴浩監督の下でプレーした選手たちは白星を重ねたことで、大きな自信をつけただろう。
ただ、リーグ制覇を飾り38年ぶりの日本一に輝いた阪神には11.5ゲームの大差をつけられた。8月上旬まで首位争いを繰り広げていたが、投打で盤石だった阪神とは余力に差があった。シーズン終盤にラストスパートをかけられると独走を許す形となり、直接対決で9勝15敗1分と負け越し。CSファイナルステージでも敵地・甲子園で3連敗を喫し、力尽きた。
固定できなかった四番
課題だった救援陣が整備され、野手陣も小園海斗、羽月隆太郎、田村俊介、中村貴浩と楽しみな若手が多い。その中で一本立ちしてもらわなければ困る選手がいる。今季自己最多の11本塁打をマークした末包昇大だ。阪神は大山悠輔、巨人は岡本和真、DeNAは牧秀悟、ヤクルトは村上宗隆と「不動の四番」がどっしり座るが、広島は最後まで固定できなかった。
開幕から四番で起用された来日2年目のライアン・マクブルームは70試合出場で打率.221、6本塁打、31打点と状態が上がらず。巧打者の西川龍馬、松山竜平を起用したほか、菊池涼介、上本崇司を抜擢するサプライズ采配でやりくりした。「つなぎの四番」で機能した時期はあったが、理想は信頼を置ける強打者で固定したいだろう。9月中旬以降は堂林翔太で固定され、100試合出場で打率.273、12本塁打、35打点をマークした。
堂林が32歳という年齢を考えると、首脳陣には若手の和製大砲が台頭してほしい思いはあるだろう。その可能性を秘めているのが末包だ。プロ2年目の今季は開幕ファームスタートだったが、6月13日に一軍昇格。8月以降に9本塁打と量産体制に入り、65試合出場で打率.273、11本塁打、27打点をマークした。魅力は飛距離だけではない。得点圏打率.361と勝負強さが光り、本塁打を打った今季の試合は8勝1敗1分。勝負を決める殊勲打が目立った。DeNAと対戦したCSファーストステージ第2戦では、6回に代打で登場すると相手先発・今永昇太から左翼席上段に運ぶソロ。シーズンで9打数無安打4三振と攻略に苦しんだ左腕から、今季最後の対戦で最高の結果を出した。
「大爆発してくれそうな予感」
野球評論家の堀内恒夫氏は週刊ベースボールのコラムで、広島の来季V奪回のキーマンに末包の名を挙げている。
「リーグ優勝を目指すなら、来季へ向けての最も大きな課題は攻撃力の強化であることは言うまでもない。外野手で今季2年目の末包という大砲候補がいるじゃないか。パワーはあっても、昨季まではバットにボールが当たらなかった。でも、今季は長足の進歩が見られる。彼の存在には大いに期待したいね。今季から指揮を執る新井貴浩監督には、率先垂範して金の卵を鍛えてもらいたいと思う。新井監督には、『カープ黄金期よ、もう一度!』くらいの強い意欲を持って新たなチーム改革へ臨んでもらいたいね」
「身長188cm、体重112kgの巨漢だけど、昨季は一軍レベルのピッチャーのボールがバットに当たらなかった。だが、今季は大きな進歩が見られる。来季は長距離砲として、広島打線の中核で、大爆発してくれそうな予感が漂うからね」
スケールの大きいプレースタイルとファンに愛されるキャラクターは、同じドラフト6位で入団し、現役時代に通算319本塁打をマークした新井監督と重なる部分がある。来季は20本塁打では物足りない。30本塁打を超えたときに、6年ぶりのリーグ優勝が現実味を帯びてくる。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)