11月1日のFA宣言締め切りを前に、広島ではセ・リーグナンバーワン捕手の会沢翼捕手(31)に続き、先発の柱のひとり、野村祐輔投手(30)が宣言せず残留を決めた。リーグ4連覇に失敗、来季の巻き返しを図る現場、フロント首脳はホッと胸をなでおろした。
その裏には一石二鳥の思惑も見え隠れする。
今季は1ケタ勝利と不振だったが、25年ぶりのリーグ優勝を果たした2016年には16勝で最多勝のタイトルを獲得している野村の残留に、佐々岡新監督は「投手陣を引っ張ってほしいと言いました」とニューリーダーに指名。松田オーナーも異口同音に「(残留は)ありがたい。先発のリーダー役になる。そういう姿を見せてほしい」と期待を寄せた。
契約交渉が3度にわたり、一時はFA移籍決断かとヤキモキさせた野村だが、実は投手陣のニューリーダー役拝命の背景には、新戦力の加入があり、早々とアプローチしていたのだ。
広島がドラフト1位で指名したのは、野村にとって明大の後輩にあたる森下。人気度ではロッテのドラフト1位・佐々木(大船渡高)、ヤクルト1位の奥川(星稜高)に劣るものの、即戦力としては掛け値無しのナンバーワン投手と呼び声が高い。
野村は広島が17日のドラフト会議で森下を1位指名すると、間髪入れずに隠密行動。明大・善波監督を通じ、森下にこうエールとアドバイスを送ったというのだ。
「いい真っすぐを投げるなと思っています。若いチームなので、溶け込みやすいと思う」「まずはケガをしないこと。即戦力で取ってもらっただろうから、やってきたことをそのままやることだと思う」
すでに投手陣の新リーダーとして水面下で動いていた野村。その野村が16年の新人王に輝いたのと同様、森下も一生に1度のタイトルを獲得できれば万々歳。2人の相乗効果で、赤ヘルファンの来季への期待が大きく膨らむことになる。(江尻良文)
(※引用元 夕刊フジ)