次の打者でアウトを取るために意図的に勝負を避ける故意四球、いわゆる「敬遠」の数は、強打者ほど多いというイメージがある。例えば、西武の中村剛也やソフトバンクのウラディミール・バレンティンといった現役屈指の打力を持つ強打者は、敬遠も多いのだろうか。今回は、「現役選手の敬遠されている数」を調べてみた。
現役最多は意外なあの選手
現役選手の敬遠数を調べ、上位10人を以下にまとめた。
第1位 50回……石原慶幸(広島)
第2位 43回……青木宣親(ヤクルト)
第3位 41回……糸井嘉男(阪神)
第4位 40回……坂本勇人(巨人)
第5位 35回……福留孝介(阪神)
第6位 34回……ウラディミール・バレンティン(ソフトバンク)
第7位 30回……内川聖一(ソフトバンク)
第8位 28回……中島宏之(巨人)
第9位 27回……松田宣浩(ソフトバンク)
同9位 27回……柳田悠岐(ソフトバンク)
※( )内は現所属チーム
最も敬遠されている現役選手はなんと広島の捕手・石原慶幸だ。これまでは阿部慎之助が通算78敬遠でトップだったが、昨年現役を引退したためにそれまで2位だった石原慶が自動的にトップになった。
ただ、長く広島の正捕手を務めてきた石原慶は、バッティングよりも球界屈指のキャッチング技術など、守りが魅力の選手。青木や糸井、坂本、バレンティンといった巧打者、強打者を抑えての1位というのは不思議に思う人も多いだろう。しかし、2016年にはリーグ最多の5敬遠を記録するなど、毎年敬遠数を積み重ねてきているのだ。
石原慶がこれだけ多く勝負を避けられてきた要因としては、八番打者を務めることが多かったことが挙げられる。セ・リーグの場合、次の打席は投手となる。投手は打ち取りやすいため、八番との勝負を避けるわけだ。そのため、石原慶も敬遠される数が多くなったと考えられる。
実際、石原慶と併用する形で八番を任されることが多かった広島の會澤翼も、20敬遠で現役17位にランクインしている。現在は、上位20人に石原と會澤以外のセ・リーグの捕手は入っていないが、例えば阪神の梅野隆太郎といった、八番での出場機会が多い捕手は、今後ランクインする可能性が高い(梅野は2019年に4敬遠を記録)。
歴代最多は世界の王貞治
ちなみに、NPB史上最も敬遠されたのは王貞治だ。1959年から1980年までの実働22年間で積み重ねた敬遠数はなんと427。1シーズンあたり約19個も敬遠された計算になる。それだけ相手チームにも警戒された強打者だったのだ。
ただ、ON時代は王が三番、長嶋茂雄が四番だったことが多いので、王を敬遠したとしても長嶋と勝負することになる。また、王が四番に固定されてからは、巨人史上最強の五番打者と称される柳田真宏が次に控えていた。当時のバッテリーは相当胃が痛かったことだろう。
「最も敬遠されている現役選手」を紹介したが、石原慶が現役トップであることを知らなかった人も多いのではないだろうか。今年41歳を迎える石原は、近年打撃の不調により大きく出場機会を減らしているが、復調すれば相手チームにとって嫌な選手。開幕が不透明な今シーズンだが、もし開幕した際は、石原慶が現役最多敬遠数を更新するかに注目してみてはどうだろうか。(文=中田ボンベ、写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)