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プロ野球開幕、最短「6・19」に生じる『矛盾』/専門家チームは…

2020年5月18日

プロ野球開幕、最短「6・19」に生じる『矛盾』/専門家チームは…

何だか〝既定路線〟になっているようだ。新型コロナウイルスの感染拡大で延期を余儀なくされているプロ野球の今季開幕日についてである。11日にNPB(日本野球機構)とJリーグの合同で行われた「第7回新型コロナウイルス対策会議」で専門家チームは現時点でシーズンの開幕や再開の日付を決めるのは難しいという見解を示した。

これを受け、同日午後にJリーグは実行委員会、NPBもセ・パ12球団とともに代表者会議を実施。それぞれの会合でJリーグ側は再開日程について議論することをせず再開へ向けたプロトコルを詰める確認作業に終始して慎重な姿勢だったのに対し、一方のNPBと12球団のプロ野球側が「6月中旬から下旬の開幕を目指す」と結論を出したことには個人的に焦燥感を覚えた。

NPBと12球団の代表者会議が開かれる数日前、プロ野球の今季開幕日が「6月19日」のプランでほぼ内定しているとの報道が一部のメディアで報じられた。これは一刻も早く開幕し、損失を少しでも食い止めたいとする一部強硬派の球団関係者が世論を同調へと導くためにあえて情報をリークした〝観測気球〟との見方が球界内では強い。真偽のほどは不透明だが、いずれにせよ11日の対策会議で専門家チームから開幕日決定の同意を得られず、その計算は狂った。

開幕の日付を決めるのは難しいとの見解を示され、Jリーグは再開を事実上の白紙としたままなのにプロ野球側がこだわるように「6月中旬から下旬の開幕を目指す」として最速6月19日のスタートに含みを持たせ続けているのも、すでに許容範囲ギリギリの段階となっていることをうかがわせる。野球規約上、シーズン成立の最低試合数は120試合。これ以上、目標として掲げる開幕候補日の期間から遅れれば規約を変更する作業が必要となることもネックになる。

しかも今季は実施条件として無観客試合でのシーズン開幕が内定済み。ただでさえ入場料等の収入が見込めず大減収を強いられる中で主催試合数まで減ってしまうことになれば、やり繰りの大変な球団にとっては死活問題だ。だから22日に予定されている「第8回新型コロナウイルス対策会議」では専門家チームに理想を言えば「6・19」、最悪でも6月下旬での開幕日決定に是が非でもOKサインを出してもらいたいというのが、多くのプロ野球関係者の偽らざる心境だろう。この目標期間内の開幕日が決まれば日程的にかなり難儀な強行軍となる危険性を含みながらも、シーズン120試合の成立と試合数を短縮させてのCS(クライマックスシリーズ)、そして今のところ11月21日の開幕が濃厚な日本シリーズの実施も何とか見えてくる。

ちなみに何かと毎年のように議論の対象となっているCSは各球団にとって上位になれば単に敗者復活のチャンスにつながるだけでなく重要な資金源となることに加え、リーグ優勝決定後の消化試合をなくす役割を果たす存在としても実はかなり重宝されている。こういうご時世で各球団の財政事情がひっ迫している時だからこそ、日程的に多少無理が生じてもCSは可能ならば中止にしないでほしい――。そのように希望している球団は実際のところ、多いようだ。

しかしながら、プロ野球の6月開幕には現実として厳しい目が注がれることを覚悟しなければいけない。辛口で知られる野球解説者・張本勲氏も17日に放送されたTBS系の生番組「サンデーモーニング」でプロ野球の6月開幕について「難しいと思いますね」と懐疑的な見方を示した。先駆けて開幕した台湾や韓国のプロ野球と比較し、国土が広い日本の場合はチームの移動手段として飛行機を利用しなければならないケースが出てくることで数多くの人と接触する機会を生む危険性があると具体的に指摘。これは非常に的を射た見解である。

同氏の指摘するように台湾や韓国は多少無理をすればチームバスでの国内移動が可能だ。だが日本はそうもいかない。対戦カードによってはビジターの球団が飛行機だけでなく新幹線を利用しなければ移動できない場合もある。公共交通機関を利用して移動すれば空港や駅で必然的に他の乗客との「密」を生み、その場には感染に対して警戒心の薄い人たちがファンの群がりとして集まってしまうことも十分に考えられるだろう。

この「移動」こそ、プロ野球開幕の大きな難題であり、関係者たちがどうにかクリアしなければいけない懸案事項となっている。引き続き緊急事態宣言の対象となっている8都府県について21日にも解除できるか判断される見通しとなり、感染は明らかにピークアウトを迎えているものの、自粛ムードの緩みから第2波再来の懸念があるのも事実。政府及び各自治体は緊急事態宣言の発令有無にとらわれず、今後しばらくの間「県境をまたいだ移動の自粛」を強く訴えているのが現状だ。こうした背景があるにもかかわらずプロ野球は開幕を決めて全国各地に点在するチーム同士が本拠地と敵地を互いに行き来しながら、これまで通りの対戦カードを組むとなると、どうしても多くのツッコミどころが出てくる。

プロ野球は一軍の出場選手登録枠が29人、ベンチ入り人数が25人となっている。監督、コーチやチームスタッフ、球団関係者、敵地でのイベントに携わるパフォーマーの人たちまで含めればビジターチーム関連で移動人数の合計が総勢50人を超えることも珍しくはない。感染リスクを警戒しなければいけない風潮がまだまだ続く中、これに近いレベルの大人数が県境を超える大移動でやって来て連戦をこなすため数日間滞在するとなると、その各自治体から理解を得て試合開催の許可を取るにはかなりの根回しも必要となるだろう。某球団の本拠地周辺では、その自治体のトップが第2波を誘発しかねないとしてプロ野球開幕に難色を示し続けているとの情報も実際に飛び交っている。

プロ野球の開幕が人々の〝自粛の防波堤〟を崩壊させてしまうことにも

今季に限って東と西のブロックに分けてシーズン公式戦を組み、東西それぞれの地方で集中的に試合を開催するとのプランも一部報道で浮上しているとされていたが、すぐに立ち消えとなった。チームによっては本拠地を使えずに宿舎での長期滞在を強いられ、不平等を生んでしまう致命的な問題点があることで現実性には乏しいからだ。何より、このプランが仮に施行されるとしても宿舎滞在を強いられるチームは県境またぎで大人数の移動をすることになる。だから、すべての解決にはどうしてもつながらない。

そして恥ずかしながら我々マスコミにも〝感染源〟となるハイリスクがある。開幕すれば各試合の球場に大挙して新聞、テレビ、あるいは雑誌、Webなどに属する記者やカメラマン、テレビクルーらが押し寄せるのは必至だ。ビジターチームの番記者や取材関係者も場合によっては当然県外から公共交通機関を利用し、選手らと同じように感染リスクが非常に高い移動条件の中で大勢来場する。

それでも、もし各球団がコロナ禍以前のようなスタイルでマスコミに門戸を広げて球場への出入りを制限なく許可し、ソーシャルディスタンスを確保しにくく〝3密〟すべてに引っかかりやすい「囲み取材」をOKするとしたら、やはり不安は拭い去れない。球界内からも「マスコミからの取材に関して何も対策を講じなければ十中八九で感染者、あるいはクラスターを発生させる第2波誘発の要因につながってしまう」との警鐘が数多く鳴らされている。

「プロ野球の開幕が許されるならば大人数のチーム遠征もOKなわけだし、それよりも少人数の短い日程の旅行は自粛しなくていいはず。観光地で〝密〟を避けながら行動すれば全然問題ない」

このように胸を張りながら都合のいい解釈をする人も実際にたくさんいる。ただ、こうなるとプロ野球の開幕が人々の〝自粛の防波堤〟を崩壊させてしまうことにもつながりかねないだろう。プロ野球界はさまざまな開幕への〝矛盾〟を解決しなければ、たとえ「6・19」を決めても厳しい風当たりは避けられないかもしれない。

(※引用元 WEDGE Infinity

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