カープは今年も打線に力があります。何と言っても得点能力が高い。そんなカープ打線を支えるキーマンとも言える人物が、ついにこのコラムに登場です。(鈴木)誠也? (西川)龍馬? いやいや、一軍打撃コーチ、朝山東洋です!
新井貴浩が鈴木誠也に伝えた「カープの四番打者の意味」
東洋とは同学年ということもあって、入団年こそ違いましたが(東洋は久留米商高卒業後1995年に入団。私は駒大を経て99年入団です)、一番仲が良かったですね。馬が合うというか。東洋も一軍デビューは私と同じく99年で、一軍でもずっと一緒にいましたし、食事にもよく行っていました。
彼はああ見えて、顔がとっても大きいんですよね。沖縄の“サーターアンダギー(沖縄の伝統揚げ菓子)”みたいな顔をしている。「サーターアンダギーコーチ」って呼ばれているとかいないとか(笑)。
というのはもちろん冗談で、彼は足が速い、肩は強い、パンチ力がある。攻守走そろった、本当に“センスの塊”みたいな選手でした。ケガがなかったらレギュラーになって、すごい選手になっていたと思いますが、とにかくケガばかりでしたからね。ヒザから何から全部です。
私は東洋がケガに苦しむ姿を、ずっと見てきました。そして、04年に現役を引退するときも、いろいろと話をしました。彼はやろうと思ったら、まだやれたと思います。例えば極端な話、カープじゃなくて、ほかのチームだったとしても。でも最後、話している中で「もう体が言うことを聞かない」と。「もし続けたとしても長いことはできない。自分の思うように動けないから」と言っていました。早い決断でしたし、私としてはすごく寂しかったですが、「もう少しやれよ」なんて引き留めることはできませんでした。すごく苦しんでいる姿を間近で見ていましたからね。本当にケガに苦しんだ野球人生でした。
得点力アップに期待大!
引退後はコーチとしてカープに残った東洋。私がカープに復帰した後は選手とコーチ、形としてはこれまでとは違った間柄にはなりましたが、今までの関係は変わりませんでした。彼の人間性も知っていますから、いいコーチになっているなあというのは感じましたね。
何より情熱があります。厳しさの中にも、優しさであったり、温かさがある。だからこそ、選手たちも東洋のことを信頼してるんじゃないのかなと思います。
選手時代に苦労してきた東洋だからこそ伝えられることもたくさんあると思います。本当に大変な経験を、いろいろとしてきていますから。それに、今年で16年目とコーチ歴も長い。若くしてコーチとなり、ここまで続いたことで、いろいろなものを見て、いろいろなことを経験して、引き出しも多いことでしょう。
今年から一軍コーチとなりました。私としては期待大です! でも、一軍コーチになったからといって、東洋の役割が大きく変わることはないと思います。これまで同様、練習するときは厳しく。でも試合では、いかに選手がやりやすく、打席に立ちやすくするか。あれダメ、これダメとかではなくて、もうここに決められたらしょうがないから割り切っていけとか、選手が楽になるようなアドバイスを送ったりしてね。どう伝えたら選手がよりクリアな状態で打席に入れるのかというのを東洋なりに工夫しながら、シーズンを戦っていくと思います。
カープは、もともと得点能力の高い打線です。今年は“東洋効果”でさらに磨きがかかって、得点がたくさん入るんじゃないでしょうか。どういうふうになるのか、すごく楽しみです。
最後に、ファンの皆さん! いくらサーターアンダギーに似ているからと言って、テレビの前などで応援する際にくれぐれも“サーターアンダギーコーチ・朝山東洋”、略して「サーター朝山」なんて呼んじゃダメですよ!(笑)
(※引用元 週刊ベースボール)