阻止率が高くても……
2017年の記録の裏側に迫る短期連載。第4回は盗塁阻止率だ。
まずパであるが、72試合以上の出場での阻止率1位はロッテ・田村龍弘の.337。ただ、だから彼が「一番走られなかった男」というわけではない。通算83回企図され、許した盗塁は55。西武がチーム全体で51盗塁だから、「よく走られながら、よく刺した男」と言われても仕方あるまい。
むしろパではソフトバンクの甲斐拓也が光る。試合数で田村の130試合に対し、102試合と少ないが、企図された数は34で許した盗塁は23、阻止率は.324となっている(リーグ3位)。
「ソフトバンクは投手陣のけん制やクイックがしっかりしているからでは」という声もあるかもしれないが、高谷裕亮が50盗塁を許してしまったこともあり、ソフトバンク全体で許した盗塁82はリーグワースト3位で決して少なくない。甲斐がパの走者に「走りにくいキャッチャー」と認識されていたことは間違いないだろう。
一方、セであるが、同様に72試合以上の阻止率1位は巨人・小林誠司の.380。50回の企図で許した盗塁は31だ。チーム全体でも巨人は43許盗塁。セのほうが盗塁が少ない傾向もあるが、これは12球団最少である。
チーム全体の阻止率が高いのは、阪神で.340。梅野隆太郎が小林に次ぐ2位の.379であるが、こちらは41許盗塁、チーム全体でもリーグワースト2位の68盗塁を許し、やはり「走られなかったチーム」とは言いづらい。
阪神の盗塁数を増やした最大の要因は、リーグ最多112盗塁(2位は中日で77)を誇る広島打線だ。球団別のデータを見ると、対阪神に最多の30盗塁となっている(梅野は18許盗塁)。
広島はリーグ2位となった阪神に対し、打率.286で一見カモにしているようにも見えるが、ホームラン数は最少の18、犠打は最多の29(いずれも対セ球団内)でリーグ最強と言われた阪神投手陣、半分近くがホームランの出にくい甲子園球場という戦いの中で、機動力、つなぎの小技を駆使した戦い方が垣間見える数字だ。
小林にしても許した31盗塁中、広島は13で阻止率.133と低い。強肩捕手、強い相手にこそ燃える広島の凄みが感じられる。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)