かみ合う投打
巨人と阪神の争い――。開幕前はそんな予想が多かったセ・リーグにあって、その両チームに負けじと好スタートを見せているのが広島だ。9試合を終えて5勝3敗1分け。その好調の理由とは(数字はすべて4月4日現在)。
好調なチームのバックボーンは、やはりまず先発陣だ。開幕から9試合で、ゲーム前半から完全に相手に主導権を渡す展開になったのはわずかに1試合のみと、先発陣が常に試合をつくることに成功している。
昨年の新人王・森下暢仁は初登板に6回無失点で勝利し、九里亜蓮も早くも2勝。ここに、昨年後半は右ヒジ手術のため戦列離脱していたエース・大瀬良大地も復活勝利を挙げ、「三本柱」がそろった。
昨季からの最大の懸案だったリリーフ陣は、フランスアの戦列離脱がありながら、代わりにクローザーを務める栗林良吏、中継ぎで起用される森浦大輔、大道温貴のルーキー3人衆がいずれも無失点投球を続ける奮闘、むしろ昨季より使えるコマ数が増えた。森浦-塹江敦哉-栗林の本来の勝ちパターン以外に、それらの投手の3連投を避けながら、ケムナ誠や大道を組み入れた「第2の勝ちパターン」も稼働し、順調だ。
打線はセ・リーグの打率トップを走る菊池涼介と、西川龍馬の二、三番が引っ張る。3月中はやや低調だったが、安部友裕が一軍合流とともに爆発。會澤翼と坂倉将吾の「打てる捕手陣」のバットも上昇傾向にあり、下位まで厚みが出てきた。新外国人大砲・クロンはまだコンスタントな活躍ができていないが、打線全体の調子が上がってくれば、調整を待つ余裕も出てくるだろう。
さらに、ここまででは目立っていない力もまだ秘められている。今季は機動力野球復活にも取り組んでいることだ。代走で出てくる控え選手たちに複数ポジションを守れる選手が多く、また打撃も捨てたものではないチーム構成は、ゲーム後半にはどんどん代走を繰り出す展開になることが必至の、延長戦なしの今季の特別ルールにフィットするはずだ。
下馬評ではBクラスという声も少なくなかった広島だが、こう考えると、この好調は地に足がついたもの。春から始まった「コイの季節」は、まだまだ続きそうだ。(写真=大賀章好)
(※引用元 週刊ベースボール)