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講師22年目の私が見習いたい、広島カープ・白濱裕太の『続ける力』

2021年11月11日

講師22年目の私が見習いたい、広島カープ・白濱裕太の『続ける力』

冒頭から自分の話で恐縮だが、中高一貫校の非常勤講師となって22年目になる。当初は大学院の博士課程に通いながらの勤務だったのだが、ほどなくして、もう一つの夢であったイラストレーターとしての仕事も入ってくるようになり、結果「二足のワラジ」を履き続けて現在に至っている。

本来、非常勤講師という仕事はあまり長く続けるものでもない。専任教員や研究者の職を得るまでの間に働く若者や、定年後に講師となったベテラン教員が多く、どちらも数年で職場を去っていく。気が付けば勤続22年の私は、講師室内で最も古株となっていた。

自ら選んだ働き方とはいえ、このままでよいのだろうか。年数ばかりは増えてはいるが、専任教員のように研修制度があるわけでもなく、スキルはあまり身についていない。大幅な昇給があるわけでもなく、老後の保障もない(一般企業における、正社員と非正規雇用を考えてもらうとわかりやすいと思う)。日々の仕事に追われている間はまだいいが、ふと立ち止まって考えると、茫漠とした不安に襲われたりもする。

なぜ18年間で一軍86試合出場の白濱が現役を続けていられるのか

そんな時、私の頭に浮かぶのは、カープの捕手・白濱裕太の姿である。今年36歳の白濱は、カープでは長野久義・松山竜平に次いで3番目に年齢が高い(松山とは同学年)。さらにプロ通算18年という年数は、チームでは最長である。球界全体で見てみても、通算18年のプロ在籍というのは現段階で11位、白濱の他には糸井嘉男(阪神)や内海哲也(西武)、先日引退を発表した鳥谷敬(ロッテ)など、名だたる選手ばかりが並んでいる。

「それにしては、カープの白濱という名前は聞いたことがないが……」という他球団ファンもいるだろう。それもそのはずで、白濱が一軍の試合に出場したのは18年間で86試合。白濱はその野球人生の多くを、二軍の本拠地である由宇で過ごしている。推定年俸は650万円。15年以上現役を続けているプロ野球選手の中で、推定年俸が1000万円を下回るのも白濱のみだ。

なぜそのような白濱が現役を続けていられるのか、と思う人もいるかも知れない。競争の激しいプロの世界では、一軍に上がれない状態が2〜3年続けば、戦力外通告を受けることもざらにあるからだ。過去の実績がある選手に関しては猶予が与えられることもあるが、白濱の場合はそういうわけでもない。

白濱のプロ生活のスタートラインは華々しいものであった。春夏4回連続で甲子園に出場し、3年春のセンバツで優勝を果たした広陵高校のメンバーであった白濱は、2003年のドラフト1巡目でカープに指名された。「城島二世」とも呼ばれた強肩巧打の捕手として期待が寄せられたが、一軍出場を果たしたのは入団から8年目。入団時は倉義和・石原慶幸の両捕手がガッチリと扇の要を守っていたし、そのうちに會澤翼が台頭してきて、白濱の出場機会はその後も増えなかったのである。そうなると、白濱が長く現役を続けている理由とはいったい何なのだろうか。

「何かあった時には白濱がいる」という安心感

由宇練習場に行けば(ここ2年は無観客が続いているが)、一回り以上も年の離れた選手に交じってプレーする白濱の姿を見ることができる。白濱は、こうした若い選手たちにアドバイスをするという役割も担っているのだが、何より白濱の特筆すべき点は、そのキャッチングの上手さにある。まず捕球時にミットがほとんど動かない。うまく拍手を打てた時のような、パーンという乾いた音が響く。こうした白濱の技術は、一軍で何かアクシデントがあった時に必要になる。それをまざまざと思い知らされたのが、昨年9月10日のヤクルト戦であった。

2対1の僅差で迎えた9回表。8回裏に坂倉将吾の代打として出た會澤が、そのまま守備に就いた。ところが廣岡大志のファウルボールが會澤の顔面を直撃、そのまま担架で退場する事態となったのである。ベンチに残っている捕手は白濱のみ。急遽マスクをかぶった白濱は、投手フランスアをうまくリードし、無失点に抑えた。経験の少ない若い選手であれば、こうはいかなかったかも知れない。「何かあった時には白濱がいる」というのは、物凄い安心感を与えてくれるものだと多くの人が気付かされたし、白濱が現役を続けている主な理由もそこにあるのだと思う。

しかし長年一軍に上がれず、華々しい活躍もできないとなると、多くの選手は心が折れてしまうだろう。一方白濱は、18年目のシーズンを終えて「僕は、(自分から)引退するとかいう立場ではない。必要とされるときに貢献をしないといけない」と語っていた。また以前、「結局は自分次第で、くじに自分の人生を左右されたくない」という理由から、おみくじは引かないという話もしていた。

思うに、白濱の最大の長所というのは、そのタフな精神力にあるのではないだろうか。自らの立場を理解し、いつ一軍から必要とされてもいいように準備を重ねる。この状態を続けるというのは、並大抵の精神力ではできないはずだからだ。

私自身に話を戻せば、白濱ほどの誇れる技術があるわけでもない。しかし「これでよかったのか」と人生を振り返る時、「少なくとも仕事を続けることはできているのだ。とにかく目の前の生徒に全力で向き合って、仕事を全うしよう」と思えるようになったのは、白濱から受けた影響も少なからずある。今後もその「続ける力」を見習っていきたいので、白濱には一年でも長く現役を続けていって欲しいと願っている。

(※引用元 文春オンライン

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