今季セットアッパーとして地位を確立した矢崎拓也にとっては、フォークボールが生命線だ。150キロ超の直球に交えて140キロ前後の速く鋭く落ちる変化球を扱う。自身でも「基本真っすぐとフォークがメーン球種の投手」と分析しており、その重要度は把握している。
8月16日には無症状ながら新型コロナウイルス感染が発覚。実戦復帰は27日の二軍戦(ウエスタン・ソフトバンク戦=由宇)で1回無失点だった。すると、翌日に一軍昇格。佐々岡真司監督も「(矢崎は)タフな選手なので」と評価しており、早期の戦線復帰を果たしたのだった。
一軍復帰戦となった28日の巨人戦(マツダ広島)。2点リードの8回のマウンドに立った。2安打と四球で無死満塁を招いたが、伝家の宝刀・フォークが冴えた。大城卓三からフォークで空振り三振。続く中島宏之はスライダーで二飛とし、吉川尚輝を再びフォークで空振り三振とした。
「四球とか気にして置きにいくことはやめて、腕だけは振って投げようと思っていた」。磨き上げた勝負球を信じ、右腕を投げ下ろした。
そのフォークボールでつくり上げる高い空振り率もあり、セットアッパーとしての信頼も増している。矢崎自身は「あまり8回は投げていないと思うのですが……」と笑って謙虚に話すが、復帰戦で送り出された“8回”という場面が彼の立ち位置を示している。
「全力を尽くして、チームの一員としてゼロに抑えるのが仕事。個人としては与えられた場面で全力を尽くすだけ」。フォークを武器に守護神・栗林良吏にバトンをつなぐ。(写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)