カープに元気がないと、セ・リーグが面白くない。とくに熱心なカープファンというわけではないが、牙を剥いた時の広島の勝負根性を味わってきた者としては、近年の戦いぶりは七味の効かないそばをすすっているような味気なさを感じてしまう。
野村祐輔(33歳/2勝3敗)、大瀬良大地(31歳/8勝9敗)、九里亜蓮(31歳/6勝9敗)。素質とセンスを考えたら、まだまだこんなもんじゃないはずだ。
昔と違い、今の30代は若い。まだまだ働き盛りの年齢なのに、投手陣のなかでは年長者の部類に入るからなのか、ピッチングにいい意味での荒々しさがなくなったような印象を受ける。
「スピードだってそんなに違わないし、変化球も使えるし、コントロールもフィールディングも、僕のほうが菅野(智之/当時・東海大→巨人)より絶対上だと思ってますから」
すました顔でサラッと言い放ったのは、当時、明治大のエースだった野村だ。あの頃のとんがった思いを、もう一度マウンドでぶつけてほしいものだ。
動ける体重100キロの大砲
9月のスカウト会議のあと、スカウト部長が明かした「今年は右の大砲」。それが本当なら、この逸材はどうだ。
内藤鵬(日本航空石川/三塁手/180センチ・100キロ/右投右打)のバッティングは、練習を見て驚き、実戦を見てもう一度驚く。
日本航空石川グラウンドのレフト後方にあるブルペン。その屋根に立て続けに、内藤の大放物線が着弾して、ものすごい音をたてても、選手たちは誰も振り向かない。それくらい当たり前の日常になっているのだ。試合では、ボールを持ち上げさえすれば、場外弾にバックスクリーン直撃の印象的なホームランばかり。
100キロあっても柔軟な身のこなしと、猛練習で身につけた正確なスローイングで守備力も決して悪くない。とことん練習できるタフな心身も備えて、今のカープにこんなに向いている「大砲」もいないのではないか。
大学生で探すなら、森下翔太(中央大/外野手/182センチ・87キロ/右投右打)。東海大相模高時代から定評の長打力に、大学1年でのレギュラー抜擢からの「東都」の4年間で磨きをかけられた勝負強さ。右打ちでは学生球界ナンバーワンスラッガーに成長し、今季センターにまわって、広い守備範囲と猛肩も発揮している。
「右打ちの長距離砲」という言い方はしても、プロのニーズは「打つだけじゃ困る」が本音。「走れて、守れる」を兼ね備えた大砲なんて、そうそう出てくるわけじゃない。いる時に獲るのが鉄則だ。
内藤、森下のどちらかを1位で獲れたなら、2位でさらにもうワンプッシュ。
抜群の身体能力と意欲旺盛なプレースタイルの古川雄大(佐伯鶴城/外野手/185センチ・89キロ/右投右打)は、いかにもカープ向きのガッツマン。最近のカープに少なくなってきたタイプの逸材だ。ユニフォーム姿のシルエット、50m6秒0のスピード、タイミングが合った時の130m級の長打力に強肩。なんとなく、二松学舎大付時代の鈴木誠也に重なって見える。
今夏は惜しくも大分大会準決勝で1点差の惜敗。甲子園に出場していれば、浅野翔吾(高松商)並みの活躍をしていたかもしれない。
3位以下はイキのいい投手を
上位で目論みどおりの指名ができれば、今度は”投手”だ。
どちらかと言えば、先発タイプ。気迫に満ちた投げっぷりのいいカープ好みの投手がほしい。
関根智輝(ENEOS/183センチ・87キロ/右投右打)、益田武尚(東京ガス/176センチ・83キロ/右投右打)、青山美夏人(亜細亜大/182センチ・84キロ/右投右打)あたりを狙いたいが、3位では残っていない可能性がある。
ならば、今季伸び盛りの大津亮介(日本製鉄鹿島/176センチ・68キロ/右投左打)ならギリギリ間に合うんじゃないか。
タイプ的にはチームの偉大な先輩である現DeNAの大貫晋一。カットボール、チェンジアップにスプリット。そして沈むシュートの球筋なんかは、大貫そっくり。変化点の近さが売りの多彩な変化球を低めに集めるコントロール。ストレートは?140キロ前半でも、変化球の質がいいから、お互いを光らせる相乗効果あり……だ。
気がついてみれば、過去4年で高校生の投手を4人しか指名していない。由宇のファームが活気を失っては、「カープ」ではない。
4位、5位なら、無名の実力者か、隠し玉になるだろう。
無名の実力者なら、草野陽斗(東日本国際大昌平/176センチ・82キロ/右投右打)でどうだ。高校3年間で、20キロ以上球速をアップさせて、150キロ台に乗せた努力のパワーピッチャーだ。福島から久々に「支配下指名」の高校生が現れるか。
隠し玉では、独立リーグから玉置隼翔(愛媛マンダリンパイレーツ/190センチ・83キロ/右投右打)でどうだ。今年20歳の若武者。まだ下半身をうまく使えていないが、腕の振りの運動量とそのスピードは、腕がひと際長いだけに、150キロなどあっという間にクリアしそうだ。
最後に気になる野手を紹介したい。平良竜哉(NTT西日本/170センチ・80キロ/右投右打)をどうするか?
スピード、瞬発力抜群の二塁手……そう「菊池涼介の後釜候補」だ。小柄に見えてもスタンド上段まで飛ばせて、左右に敏捷なフィールディング。内野も外野もこなして、突き抜けたハツラツさ、ほがらかさ……チームのムードを支配できるキャラクターも貴重で、そういう意味では「上本崇司二世」なのかもしれない。はたして平良を指名するのか。するなら何位でいくのか。カープのドラフトは今年も悩ましい。
(※引用元 web Sportiva)