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言葉の魔術師、床田の話はなぜ面白いのか?「彼の取材が楽しみで…」

2023年4月27日

言葉の魔術師、床田の話はなぜ面白いのか?「彼の取材が楽しみで…」

この男は、どんな球でも打ち返してくれる。会話のラリーは、どこまでも軽快だ。

「ハムスターを飼っていました。名前は“ひまわり”」

「マンガが好きです。とくに『ダイヤのA』」

「ボウリングのベストスコアは276」

キャリアハイの8勝をマークしても、オールスターに出場しても、飾らない人柄は変わらない。昨シーズン、右足首骨折の怪我を負っても、表情は曇らない。むしろ、故障個所の状況を丁寧に説明してくれる。

メディア内では「彼の取材が楽しみでしかたがない」という人も少なくない。キャリア15年のスポーツライター前原淳氏も「彼は野球への考えも深いですが、根っこには関西のお兄ちゃんのようなノリがあって、本筋から脱線することもしばしばです」と話す。

度々目撃されるチームメイトとの熱い「野球談議」

今シーズン、故障から復帰すると、開幕から先発ローテーションでフル回転を続ける床田寛樹である。

話し上手でユーモアもある。関西出身。なかなかに、笑いのツボも押さえてくれる。しかし、これは彼の一面に過ぎない。

「野球に対して、とんでもなく熱い」

チームメイトから、そんな声が聞こえてくる。

快速球が武器のリリーバー島内颯太郎は、チーム内での様子を語ってくれた。

「あんまり野球の話をするイメージはないかもしれませんが、違います。たくさん野球の話をしてくれます。かなり細かく、わかりやすく話してくれます。ロッカーでも、他の選手と野球の話をしている姿を見かけることが多いです」

先発ローテで好投の続く遠藤淳志も、床田の野球論の解像度の高さに舌を巻く。

「本当に野球の話もたくさんしてくれます。例えば、ボールが高めに浮く問題点を相談すると、下半身の使い方やタイミングのことまで細かく話してくれます。僕は、そうやって動きを言葉にするのが得意ではないので、分かりやすく説明できる床田さんは凄いと思います」

生来のコミュニケーション力もあるだろう。しかし、パフォーマンスの言語化に前向きなことには、何らかの「意図」があるようにも感じる。

発した言葉が感覚を取り戻すヒントになる

明るい性格や後輩への優しさは根底にある。一方で、やはり、解像度の高い「野球談議」には床田の狙いがあった。

「たしかに、人に聞かれたときに、言葉にできるように心がけています。そうすれば、自分が調子を落としたとき、感覚を取り戻すヒントになることがあります。矢崎(拓也)なんかは、そういう能力が高いです。自分も、具体的な言葉にできるようにと思います。選手によって考えが違うこともあるし、全てが同じにはなりませんが、ひとつひとつの言葉が自分のひきだしにもなります」

取材であっても、床田の説明は極めて具体的である。一例として、昨シーズン好投が続いたときの会話がメモに残っている。

「腕を振るときに、どこに力を入れるか。そういう感覚で学んだことはあります。お腹のあたりに力が入ることで、投球が安定するようになりました」

「僕は左の股関節が硬いです。その方が出力につながることもありますが、故障のリスクも生じますから、硬くなりすぎないようにしています」

パフォーマンスの再現性の難しさは、多くの選手が直面するテーマである。そのために、反復練習で理想の動きを体にしみこませていく。ただ、長いシーズン、そのパフォーマンスが再現できない時期がやってくる。そんなとき、発した言葉が感覚を取り戻すヒントになるのだという。

多くの技術職がそうであるかもしれない。新人研修の講師役が、指導を通じて自分の技量を高めるのは、他の職種でも見られる光景である。

企業の人事部も唸るようなサイクル

「体の開きが早くなる」という相談をチームメイトから受けたことがあった。

それに対する床田の話はロジカルだった。

「開きが早いなら、右肩(前側の腕)をひとつ前に入れるイメージにしてはどうか」

加えて、床田は心がけていることがある。発した言葉を、自分の動きで確認してみるのだ。

「そういうことを自分でやってみて、把握することも大事にしています。言葉にしたことは、実際にやってみます。そうすることで、気づくことがあります」

ノウハウを言語化する。惜しげもなく共有する。再確認することで、本人のスキルアップにもつながる。まさに、企業の人事部も唸るようなサイクルが展開されている。

そうか、言語化することが、選手にもプラスになっているのか。ならば、我々メディアも、遠慮なく質問をぶつけよう。そこで、念のため聞いてみた。

「取材の質問から、何か技術面で発見をしたエピソードとか、ありますか?」

床田は、いつもの笑顔に戻り、少し背中を丸めて、恐縮しながら答えてくれた。

「すいません。そ、それは、あんまりないですね……」

いつも報道陣に話題を提供してくれる。もちろん、白星も運んでくれる。そんなナイスガイのお役に立つためにも、発見があるような核心を突いた質問をできるようにならねば。そんな気持ちにさせられた。

(※引用元 文春オンライン

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