構想どおりのクリーンアップ
春季キャンプも打ち上げとなり、各球団はこれから3月20日の開幕へ向け、陣容を整えていくことになるが、ここでは、昨年リーグ連覇が途切れ、佐々岡真司新監督のタクトでV奪回を目指す広島の開幕時点での陣容のポイントを考えてみたい。
まず打線だが、何といっても明るいニュースは、腰を痛めていた松山竜平が、27日のファームの社会人チームとの練習試合で3ランを放つなど、開幕に間に合う可能性がふくらんできたことだ。当初五番予定だった松山が一軍から離脱していたことで、オープン戦では今季、パワーアップして長打力を増した西川龍馬を五番に回し、三番打者を模索していたが、松山が復帰できれば、三番・西川、四番・鈴木誠也、五番・松山の、構想どおりのクリーンアップが出来上がる。松山不在ならファーストをカバーする予定だった安部友裕、堂林翔太が好調だっただけに、むしろその2人をどのように使っていくかのうれしい悩みも出てくることになりそうだ。
そうなると、カープ打線にとって、残る最大のポイントは一番打者ということになるだろう。現状での第一候補は、一番打者として2016~18年の3連覇をけん引した田中広輔だ。注目の小園海斗とのショート争いは、守備の安定度もあり、ややリード。開幕は「一番・田中広」の形で始まる可能性が高く、田中広が一昨年までと同様の出塁率をキープしていくことができるかどうかがカギになる。
もしも、ここから小園が巻き返して定位置を手にする形になった場合は、またちょっと状況が変わってくる。小園は足があるという点では一番も面白いが、パンチ力があり、現状では好調を長く続けられるかどうかに課題があるので、今のところはどちらかというと後ろのほうの打順に置くほうがいいと思われるからだ。その場合は、一番打者の候補はレフトを守る選手か。オープン戦で好成績を挙げている野間峻祥、高橋大樹の好調が続けば候補になってくるだろう。さらにもう一人、これもオープン戦の絶好調が続くようならルーキー・宇草孔基の抜てきも面白い。
調子の上がらない投手が多いのが気がかり
投手陣のほうは、野村祐輔、中村恭平と、キャンプで故障者が出たうえ、キャンプ前はかなり豊富に見えた先発陣に、調子が上がっていない投手が多いのがちょっと気がかり。実績のある先発陣で、いまのところ順調なのは大瀬良大地、ジョンソンの両輪のみ。現状ではそれに続くのがルーキーの森下暢仁かという状況だ。現状、あまり調子が上がっていない九里亜蓮、床田寛樹が開幕までにどこまで調子を上げられるかがカギ。先発6人目はこのままいけば若手の中から遠藤淳志が入るか。
リリーフは、フランスアが良かったり悪かったりで、今のところもう一つ安定しないが、新外国人のD.ジョンソンはかなりやれそう。スコットもまずまずで、このうちの2人で8、9回はある程度計算が立ちそうだ。左腕の中村恭がいない分は速球に力のある若手左腕の塹江敦哉に期待がかかる。ここに昨年実績を作った菊池保則と一岡竜司を加えて、勝ちパターン継投を構成することになるか。さらに、佐々岡監督の新機軸であるリリーフ岡田明丈がハマるかどうか。まだ安定感を手にしたとはいえないが、ここがどうなっていくかも大きなカギになりそうだ。
多少、投手陣には不安を抱えてのスタートとなりそうなカープだが、今季のセ・リーグは混戦予想。昨年4位とはいえ、18年まで3連覇していただけに選手層の厚みは他チームよりもあるはずで、戦力的には十分V圏内。どんな陣容で開幕を迎えることになるか、楽しみなところだ。(文=藤本泰祐、写真=BBM)
(※引用元 週刊ベースボール)