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学ぶ男・大瀬良大地、恩師が贈った言葉「木鶏」に込められた意味とは

2020年7月1日

学ぶ男・大瀬良大地、恩師が贈った言葉「木鶏」に込められた意味とは

横綱・双葉山の連勝が69で止まった。このとき、友人に「イマダモッケイ(木鶏)タリエズ」と電報を打ったのは有名な話である。

少しも動じない最強の闘鶏。転じて、強さを秘め、敵に対して全く動じないこと。これが、中国の故事に由来する「木鶏」の意味である。

2014年冬、「木鶏」と筆で書かれた色紙を手に、大瀬良大地は広島の地にやってきた。あれから7年、新人王に最多勝の活躍でエースに指名された男は、開幕から2試合連続完投勝利をマークするまでに成長した。

毛筆に思いを込めた主は、九州共立大学時代の監督・仲里清(現・名誉監督)である。29歳になった大瀬良は「木鶏」の境地に近づいたのか? 恩師に問うてみた。

「全然です。親心なのかもしれませんが、まだまだだと思います。木鶏というのは、これ以上強いのはない空前絶後の鶏です。なかなかないでしょう。むしろ、完成というものはありません。一生学ぶつもり、吸収するつもりで。それでいて、明日、人生が終わるかもしれない。そんな気持ちでやって欲しい。それを、木鶏という言葉に込めました」

九州共立大を全国の強豪へと押し上げた仲里は、新垣渚、柴原洋、馬原孝浩ら多くの名選手を育てあげてきた。ベテラン指導者は、その思いを冷静に語った。

「江川(卓)、菅野(智之)、ダルビッシュ有、大谷翔平。新垣も10年に1人の素材だと言ってきました。ただ、馬原や大瀬良は好投手ですが、こういった域ではないと思っています。彼らは努力を怠るといけません。だから、木鶏という言葉を贈ったのです」

心意気だけでなく、根拠を

むろん、大瀬良の向上心や探求心は疑いようがない。「何も考えないで投げたら、自分に経験として何も残らない」。そんな考えをベースに、近年、1球1球の「根拠」を妥協することなく追求してきた。

「プロ1年目から、そういうことが大事だと思ってやってきましたが、ピッチングの引き出しがありませんでした。だから、良いときは良い、悪いときは悪い、そんな投球が続いていました。2017年くらいから、困ったら全力で真っすぐ、そんな根拠のない考えを捨てられるようになりました。ようやく、打者の反応を見ながら、1球1球に考えを持って投げられるようになり、考えとやりたいことが追いついてきたように思います」

苦い経験がある。大学時代、延長12回、205球を投げたことである。「最後はもう根性でした。ボールが走らない。そんな中、気合いと根性だけで投げました。もちろん、結果は良いものではありませんでした。そのとき、ボールだけではない何かを自分に与えることが必要だと感じました。意図を持って、根拠のある球を投げる。マウンドでは意気に感じながらも、根拠を持ちたいと痛感したものです」。

指導者やチームメイトにも恵まれてきた。しかし、大瀬良が最も学ばされてきたのは、対戦打者だった。相手打者から学ぶ。これは、仲里が強く求めてきたことである。

その証左が、大学時代、仲里は大瀬良に対し、「最初の打者には真ん中のストレートを投げるように」と言い続けてきたことであった。

ベテラン監督には、明確な狙いがあった。「真ん中ストレートでファウルが奪えれば、これ以上のカウントの取り方はありません。自分の球威に手ごたえを持っていいでしょう。一方で、打たれたならば注意して投げていく必要があるでしょう」。

悔しい1球から学び、成長の糧にする。大瀬良の野球人生は、この繰り返しであった。2年秋の明治神宮大会2回戦では、創価大に対し159球10奪三振の力投を見せながら、3対0で敗れた。翌年の全日本大学野球選手権では、再戦した創価大を完封した。しかし、準決勝で早稲田大に敗れ、神宮をあとにしている。

仲里は当時を振り返る。「あの試合も、1番打者の中村奨吾(現・千葉ロッテ)に対し、初球で真ん中のストレートを投げています。ライトが超ファインプレーでアウトにはしましたが、捉えられた打球でした」。ここから、大瀬良は繊細に投球を組み立て、ゲームメイクを果たした。ただ、試合は、3対2での惜敗であった。

信頼される投手であるために

2014年、ドラフト1位でカープに入団し、1年目から2ケタ勝利を達成し、新人王のタイトルも手にした。しかし、2年目の2015年、チームがCS進出を争う中のドラゴンズ戦にリリーフ登板し、3失点。この試合に敗れたことで、カープはCS進出を逃した。

「信頼される投手になりたい」。涙のグランドから顔を上げた大瀬良は、心に誓った。2017年、大瀬良は先発で10勝をマークしたが、満足しなかった。「少しでも長いイニングを投げられるようになりたい」。そんな責任感から、彼は、自分のピッチングを高めていった。ただ、心意気だけではマウンドに立てない。大瀬良は、根拠に基づいた武器を自分に与えていった。「学生の頃から球数が多くて、打たせてゴロアウトを奪える球として投げてきた」というカットボールの質や使い方にも工夫を凝らした。真っすぐの軌道で、バットの芯をずらす。ボールのキレや曲がり幅を妥協なく追求した。

2018年は182イニングに投げ、2019年はリーグ最多の6完投である。さらに、2020年は開幕延期の難しい幕開けにも関わらず、2試合連続完投のド派手なスタートを切った。

仲里が「木鶏」と書いた色紙を手渡した最初の教え子が、大瀬良大地だった。「あれ以降、教え子に頼まれることが増えました。けど『木鶏』は贈っていませんよ。そう簡単にはあげられませんね」。

「イマダモッケイ(木鶏)タリエズ」。あの大横綱が漏らしたくらいである。容易い道ではない。しかし、この精神がある限り、背番号14はどこまでも成長する。

開幕延期、雨天による試合開始32分遅れ、エースの重圧。すべてを跳ねのける姿は「木鶏」のようであり、試合後の顔は「木鶏」とはかけ離れた柔和さであった。(坂上俊次)

(※引用元 文春オンライン

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